2016-03-24 Thu 12:07
きょう(24日)は、1976年3月24日、アルゼンチンでホルヘ・ラファエル・ビデラ将軍による軍事クーデターが発生したことにちなみ、1983年の民政移管までの軍事政権下での弾圧の犠牲者と追悼するため、アルゼンチンでは“真実と正義の日”となっています。ことしは、クーデターから40周年、2006年の記念日制定から10周年ということで、きょうはこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1983年12月10日にアルゼンチンで発行された民政復帰の記念切手で、「統一と自由において』との国家の標語が入った1813年(独立戦争時)のコインが描かれています。 1973年7月、前大統領が辞任したことを受け、大統領選挙に出馬して勝利を収めたフアン・ドミンゴ・ペロンは、同年10月、1955年にクーデターで失脚して以来の大統領職に復帰。副大統領には、エヴィータの死後に再婚したイザベラ・ペロンを指名しました。しかし、フアン本人は1年後の1974年7月に病死。副大統領であったイザベラが大統領に昇格します。 しかし、イザベルは能力・経験ともに大統領の器ではなく、フアン・ペロンの強烈なカリスマによって維持されていたペロン党は分裂状態に陥ります。そうした中で、1973年10月にオイルショックが発生すると、アルゼンチン経済は300%を超えるインフレーションに見舞われ、経済は危機的な状況に陥りました。さらに、左翼過激派のテロも頻発し、政治的混乱が続く中で、1976年3月24日、ホルヘ・ラファエル・ビデラ将軍による軍事クーデターが発生し、イザベルは逮捕されました。 ビデラらは軍事政権を“国家再編成プロセス”と命名し、 当初は、政治ならびに経済、社会的混乱が収まれば民政を復帰させるを公約していました。しかし、実際には国会機能は停止され、ビデラとその後のロベルト・ビオラとレオポルド・ガルチェリ、レイナルド・ビニョーネによる各政権は、左翼ゲリラ掃討を名目として、労働組合員を中心に多くの学生・市民を逮捕。これにより、1万3000人から3万人以上が行方不明となったほか、政権に批判的な人々に対する様々な弾圧が行われました。 一方、軍事政権は市場原理を優先する経済開発を行ったことで、一時的に経済状況を改善したものの、対外債務が激増したことでインフレはさらに悪化。このため、起死回生の一手として、軍事政権は英国を相手にフォークランド戦争を起こしたものの敗北に終わり、政権の維持が不可能になります。 この結果、1983年10月30日に総選挙が行われ、弁護士で急進市民同盟のラウル・アルフォンシンが当選。今回ご紹介の切手の発行日でもある12月10日にアルフォンシンが正式に大統領に就任したことで、民政復帰が実現しました。 民政復帰直後のアルフォンソ政権は、国民融和の必要もあって、軍政下の犯罪を不問とする恩赦法を施行しましたが、2005年、アルゼンチン最高裁は同法に対して違憲の判決を下します。これを機に、2006年以降、国の祝祭日として“真実と正義の日”が設けられ、以後、元軍幹部らに対する有罪判決が相次いでいます。2011年12月には、大統領在任中の人権侵害の罪でビデラに終身刑の判決が下り、同じく元大統領のビニョーネも、2012年4月、56人を誘拐、拷問した罪を問われ、禁錮25年の有罪判決を受けています。 ちなみに、米国のオバマ大統領は、昨日(23日)、現職の大統領としては約20年ぶりにアルゼンチンを公式訪問して中道右派のマクリ大統領と会談し、左派政権のもとで冷え込んだ両国の関係の改善を印象づけていますが、この日程は上記のような歴史的経緯を踏まえて設定されたものと考えて良いでしょう。 ★★★ 講座のご案内 ★★★ ・よみうりカルチャー荻窪 「宗教と国際政治」 4月から毎月第1火曜の15:30より、よみうりカルチャー荻窪(読売・日本テレビ文化センター、TEL 03-3392-8891)で講座「宗教と国際政治」がスタートします。ぜひ、遊びに来てください。詳細は、こちらをご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の新刊 『ペニー・ブラック物語』 のご案内 ★★★ 2350円+税 【出版元より】 若く美しい女王の横顔に恋しよう! 世界最初の切手 欲しくないですか/知りたくないですか 世界最初の切手“ペニー・ブラック”…名前は聞いたことがあっても、詳しくは知らないという収集家も多いはず。本書はペニー・ブラックとその背景にある歴史物語を豊富なビジュアル図版でわかりやすく解説。これからペニー・ブラックを手に入れたい人向けに、入手のポイントなどを説明した収集ガイドもついた充実の内容です。 発売元の特設サイトはこちら。ページのサンプルもご覧いただけます。 ★★★ 内藤陽介の新刊 『アウシュヴィッツの手紙』 のご案内 ★★★ 2000円+税 【出版元より】 アウシュヴィッツ強制収容所の実態を、主に収容者の手紙の解析を通して明らかにする郵便学の成果! 手紙以外にも様々なポスタルメディア(郵便資料)から、意外に知られていない収容所の歴史をわかりやすく解説。 出版元のサイトはこちら。各書店へのリンクもあります。 インターネット放送「チャンネルくらら」にて、本書の内容をご紹介しております。よろしかったら、こちらをクリックしたご覧ください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインよろしくポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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