2015-11-14 Sat 22:40
パリで、現地時間13日夜(日本時間14日未明)、銃撃や爆弾などによるレストラン、コンサートホール、スタジアムなどへの複数の襲撃が市内各地でほぼ同時に発生し、この記事を書いている時点で、128人が亡くなり、180人が重軽傷を負うという大惨事となりました。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、負傷された方々には心よりお見舞い申し上げます。
事件について、オランド大統領は前例のないテロ行為と非難し、国家非常事態(l'état d'urgence)を宣言しました。第二次大戦以降、フランス本国での国家非常事態宣言は、2005年10月27日にパリ郊外で北アフリカ出身の3人の若者が警察に追われ逃げ込んだ変電所で感電し、死傷したことをきっかけにフランス全土で暴動が発生したのを受けて、同年11月に発せられたのが最初で、今回が2回目です。いわゆる仏領地域まで含めると、独立戦争時のアルジェリアで1955年、1958年、1961年の3回、1984年のニューカレドニアの事例があるだけです。というわけで、今日はこの切手です。(画像はクリックで拡大されます) これは、1985年7月3日にニューカレドニアで発行された第4回太平洋芸術祭の記念切手です。 太平洋芸術祭は、オセアニアの国・地域の文化交流を促進するために4年に1度開催される国際イベントで、第1回芸術祭は1972年にフィジーで開催されました。 第4回の芸術祭は、当初、1984年にフランスの海外領土であるニューカレドニアで開催の予定でした。ところが、芸術祭開催の決定後、ニューカレドニアでは、ジャン=マリー・チバウひきいる社会主義カナック民族解放戦線(Front de libération nationale kanak et socialiste:FLNKS)は独立国家“カナキー”の樹立を主張し、独立運動を激化させたため、芸術祭の開催時期は当初予定より1年延期して、1985年7月とされました。こうした中で、1984年、FLNKSの活動家が警察官によって殺害されると、大規模な暴動が発生。フランス政府は、ニューカレドニア全土に非常事態宣言を発しました。 この結果、ニューカレドニアでの第4回芸術祭の開催は不可能となったため、1985年3月、急遽、フランス領ポリネシアの首府パペーテで、同年6月28日から7月15日の日程で芸術祭が開催されることになりました。 これを受けて、ニューカレドニアで用意されていた芸術祭の切手は、当初の会期を印刷した部分を抹消し、新たな会期・会場を加刷して、芸術祭期間中の7月3日に発行されました。今回ご紹介の切手については、さらに、パペーテで開催された芸術祭のロゴマークも加刷されています。 なお、ニューカレドニアの独立運動をめぐる動きとしては、1998年に“ヌーメア協定”が結ばれ、①住民に対してフランス市民権とは別の“ニューカレドニア市民権”を与える、②フランス国旗とは別に、ニューカレドニア“国旗”などの公的なシンボルを制定する、③フランス政府はニューカレドニア特別共同体に段階的に権限を譲渡することなどが決められ、2018年までに、独立かフランス残留かの住民投票を行うことになっています。 ★★★ 内藤陽介の新刊 『ペニー・ブラック物語』 のご案内 ★★★ 2350円+税 【出版元より】 若く美しい女王の横顔に恋しよう! 世界最初の切手 欲しくないですか/知りたくないですか 世界最初の切手“ペニー・ブラック”…名前は聞いたことがあっても、詳しくは知らないという収集家も多いはず。本書はペニー・ブラックとその背景にある歴史物語を豊富なビジュアル図版でわかりやすく解説。これからペニー・ブラックを手に入れたい人向けに、入手のポイントなどを説明した収集ガイドもついた充実の内容です。 発売元の特設サイトはこちら。ページのサンプルもご覧いただけます。 ★★★ 内藤陽介の新刊 『アウシュヴィッツの手紙』 のご案内 ★★★ 2000円+税 【出版元より】 アウシュヴィッツ強制収容所の実態を、主に収容者の手紙の解析を通して明らかにする郵便学の成果! 手紙以外にも様々なポスタルメディア(郵便資料)から、意外に知られていない収容所の歴史をわかりやすく解説。 出版元のサイトはこちら。各書店へのリンクもあります。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインよろしくポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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