2006-04-19 Wed 23:57
4月28日からのムーミンの国・フィンランド切手展まで、あと10日となりました。というわけで、フィンランドがらみのモノをご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)
この葉書は、朝鮮戦争中の1950年にフィンランドから国連事務総長トリグブ・リーに宛てて差し出されたもので、裏面には次のような文面が印刷されています。 (文面を僕なりに訳すと次のような感じです) 国際連合事務総長 トリグブ・リー様 署名人は朝鮮での戦争に関わる全ての人に、次のように訴えます。 ・朝鮮ならびに台湾問題を交渉によって解決する用意がある人々に対して、時間を与えてください。 ・いかなる障害にも負けず、仲介を諦めないで下さい。 ・中華人民共和国に国連の代表権を与えてください。 世界の人々は、戦争ではなく、平和を望んでいます。 第二次大戦中、ソ連軍の侵略と戦ったフィンランドは、ソ連が“戦勝国”となった煽りを受けて、戦後、“敗戦国”として出発したばかりか、ソ連の圧力で、マーシャルプランの受け入れも“辞退”させられます。 このため、冷戦時代のフィンランドは、北大西洋条約機構 (NATO)にもワルシャワ条約機構にも加盟せず、中立を貫く一方で、ソ連の干渉を未然に防ぐために“親ソ”のポーズを取り続けます。こうしたフィンランドの姿勢から、冷戦下のヨーロッパでは、“フィンランド化”(西側諸国の一員としての経済体制を維持しつつも、国家運営がソビエト連邦との関係を優先的に配慮した傾向に傾いた状態)という表現も生まれました。とはいえ、当時のフィンランドにとっては、戦争をも覚悟してソ連との対決姿勢を鮮明にするという選択肢は、あまりに危険な賭けで、到底乗ることはできなかったわけですが…。 今日ご紹介している葉書の文面にも、朝鮮戦争の中国の代表権問題などで東よりの中立というフィンランドの姿勢がにじみでており、こうした主張を訴える葉書を組織的に差し出さざるを得なかった彼らの苦衷は察するに余りあります。 4月28日からのムーミンの国・フィンランド切手展では、この葉書は展示されませんが、会場に並んでいるお洒落なフィンランドの切手の背後に隠された苦悩の戦後史に思いをはせるのも悪くはないような気がします。 |
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