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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手が語る宇宙開発史(15)
2011-08-18 Thu 22:58
 御報告が遅くなりましたが、 雑誌『ハッカージャパン』の2011年9月号が出来上がりました。僕が担当している連載「切手が語る宇宙開発史」では、今回は、この切手を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

        ソ連・1959年党大会

 これは、1959年1月、ソ連共産党第21回大会にあわせて発行された「ソヴィエト人民による宇宙征服」の切手です。

 1958年末に国際地球観測年の期間が終了した直後の1959年1月27日から2月3日にかけて、ソ連共産党第21回大会が開催されました。

 ソ連の共産党大会は原則として5年に1度の開催で、前回の第20回大会は1956年2月に開催され、フルシチョフがスターリン批判演説を行ったことで知られています。したがって、第21回大会は、本来であれば1961年の開催となるはずでしたが、1959年から1965年にかけてのソ連邦国民経済発展7ヵ年計画(以下、7ヵ年計画)に対する承認を得る必要もあって、臨時党大会として1959年に開催されたというわけです。

 このときの党大会に際して、ソ連は3種の記念切手を発行しましたが、そのうちの1ルーブル切手には、「ソヴィエト人民による宇宙征服」の題目の下、クレムリンを背景に、1958年までにソ連が打ち上げに成功していた3機の人工衛星とロケットが描かれています。ちなみに、このとき同時に発行された40コペイカ切手はレーニンの肖像とクレムリンを描き、60コペイカ切手はヴォルガ河畔のレーニン発電所と労働者を描いており、いかにも“共産党大会”風のデザインでした。

 さて、第21回臨時党大会では、フルシチョフが「1970年ごろには、ソ連は工業生産でも、人口1人あたりの生産高でも世界第1位となり、資本主義との平和な競争において社会主義が勝利するであろう」と演説し、7ヵ年計画の主要な課題は「共産主義の物質的・技術的土台をつくりだすこと、ソ連邦の経済力と国防力をさらにいっそう強化すること、同時に、国民の増大する物質的、精神的欲求を、ますます完全にみたすこと」とされましたが、そうした目標を実現するためには、米国に比べて圧倒的に劣る経済力でありながら、第3次世界大戦を想定して米国と張り合うような、過重な軍事負担を軽減しなければなりません。

 しかし、自国の利益のために米国に妥協し、東側陣営の安全保障をないがしろにしたと見なされれば、社会主義陣営の盟主としてのソ連の国際的な権威は一挙に失墜してしまいます。

 そこで、ソ連は、1957年のスプートニク1号の打ち上げ以降、戦略爆撃機や戦略ミサイルの数においてソ連が米国を凌駕しているのではないかとの西側社会の誤解を最大限に活用し、米ソ両国の軍縮という形式をとって米国により多くの核兵器を削減させることで、自国の軍縮が可能となる状況をつくりだそうとしました。共産党大会にあわせて発行された切手もまた、そうしたソ連の外交戦略の一環として、歴代の人工衛星とロケットを華々しく取り上げらたと理解してよいでしょう。

 ところで、人工衛星の手前に大きく描かれているのは、党大会直前の1959年1月2日、ソ連による月探査の先鞭をつけたルナ1号を打ち上げたロケットです。このルナ計画とルナ1号については、次回以降の連載記事の中で触れて行く予定です。


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