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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手が語る宇宙開発史(13)
2011-04-15 Fri 23:37
 雑誌『ハッカージャパン』の2011年5月号が出来上がりました。僕が担当している連載「切手が語る宇宙開発史」では、今回は、こんな切手を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます) 

     ユーゴ・国際地球観測年

 これは、ユーゴスラヴィアが1958年に発行した「国際地球観測年」の記念切手です。

 第二次大戦後のソ連は自国の周辺を自分たちの意のままになる衛星国で固め、西側からの攻撃を防ぐための防波堤とすることを基本政策としていましたが、それが可能であったのは、第二次大戦中、枢軸国の支配下に置かれていた東欧諸国の多くが、ソ連によって“解放”されたという過去があったためです。

 ところが、バルカン半島南西、イタリアの対岸に位置する旧ユーゴスラヴィア王国の地域では、ヨシップ・ティトー率いるパルチザンが自力で国土の解放を進め、はやくも1943年11月には、ソ連とは無関係に臨時議会と臨時政府を樹立していました。その後、1944年10月にベオグラードを解放したティトーは、翌1945年3月、人民政府を樹立。同年11月には王制の廃止とユーゴスラヴィア人民共和国連邦(以下、ユーゴ)の成立を宣言します。

 こうした経緯もあって、ティトーの権威は国境を越えて周辺諸国にも及んでおり、ユーゴにも他の東欧諸国のようにソ連に従属する必然性はありませんでした。しかし、このことはスターリンをいらだたせ、1948年にはユーゴはコミンフォルムから追放され、両国関係は事実上断絶します。

 1953年3月、スターリンが亡くなると、フルシチョフが共産党第一書記としてソ連の権力を掌握。フルシチョフは、スターリン時代に悪化したユーゴとの関係改善に乗り出すべく、1955年5月、首相のブルガーニンとともに、ベオグラード(ユーゴの首都)を訪問します。その結果、ユーゴとの和解のためにはスターリン路線との決別が不可欠と考えたフルシチョフは、1956年初、ソ連共産党第20回大会でスターリン批判を行いました。

 ところが、フルシチョフのスターリン批判は、“スターリン主義者”の圧制に苦しんでいた東欧諸国の国民の反ソ感情に火をつけることになり、1956年10月には、ハンガリーで、かつてソ連の圧力で失脚した改革派の元首相、ナジ・イムレの復権を求める大規模な反ソ・反共騒乱が発生した。いわゆるハンガリー動乱です。

 結局、動乱はソ連軍の軍事介入によって鎮圧され、一時的に復権したナジも逮捕され、1958年6月には処刑されてしまいました。

 この間、ソ連は軍事介入へのユーゴの支持を得るべく、対ユーゴ宥和政策を推進しようとしましたが、ナジの改革路線を支持していたティトーはソ連軍によるハンガリー動乱への介入を非難し、両者の関係は再び断絶しました。

 ナジ処刑後の1958年10月24日にユーゴが発行した「国際地球観測年」の記念切手には、月と地球の周りをまわる人工衛星の軌道が描かれています。曲がりなりにも、ソ連の人工衛星を想起させるデザインの切手が発行された背景には、1956年のスターリン批判を受けての対ソ宥和路線が一定程度反映されていたのは間違いないでしょう。

 しかし、ソ連に忠実な他の共産主義諸国が人工衛星やロケットを描き、東側世界の盟主としてのソ連の技術力を誇示しているのに対して、ユーゴの切手には衛星やロケット等のメカは登場していません。こうしたところからも、他の東欧諸国とは違う、ユーゴのソ連に対する微妙なスタンスが見えてくるといっても良いのではないかと思います。


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