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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 2期目のカルザイ政権
2009-11-20 Fri 18:12
 2カ月以上の混乱を経たアフガニスタン大統領選で再選を決めたハミド・カルザイ氏の2期目の就任式が19日、首都カブールで行われました。というわけで、きょうはこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

      バーミヤン(廃墟)

 これは、2002年にアフガニスタンで発行された切手で、ターリバーンによって破壊されたバーミヤンの大仏があった石窟が描かれています。カルザイの大統領としての1期目の任期がスタートしたのは2004年12月7日でしたが、すでに2001年12月22日には彼はアフガニスタン暫定行政機構の議長に就任し、翌2002年6月19日にはアフガニスタン・イスラム移行政権の大統領に就任していましたので、この切手もカルザイ政権下での発行とみなしてよいでしょう。

 バーミヤーンはカブールの北西約240 km、アフガニスタンのほぼ中央部に位置する都市で、西暦1世紀からバクトリアによって近郊に仏教の石窟寺院が開削され始めました。有名な大仏は5世紀から6世紀にかけて彫られたもので、周囲の壁画などから弥勒菩薩像と考えられています。また、630年にこの地を訪れた玄奘(いわゆる三蔵法師ですな)は、大仏が金色に光り輝き、僧院には数千人の僧が居住していたと記録しています。

 その後、この地域はムスリムの支配下に入り、一部は略奪を受けたりもしましたが、多くの壁画は残され、19世紀以降、この地を探検した西洋人や日本人によって、その美術的価値が世界的に高く評価されるようになりました。しかし、2001年には、当時アフガニスタンを実効支配していたターリバーン政権の手により爆破され、現在では国際支援による修復作業が進められているのはご存じのとおりです。

 今回ご紹介の切手は、そうしたタリバンの蛮行を誇示することで、カルザイ政権が自らの正統性を内外にアピールすべく発行したものですが、そのカルザイ政権も汚職の蔓延や経済状況の低迷などにより、国民の支持率は低迷しています。このため、ターリバーン勢力も息を吹き返し、反政府テロが頻発するなど、治安も極端に悪化。そのことが、ますます政権の求心力を弱めているのが現状です。ちなみに、この切手の額面は25000アフガニとなっていますが、これって、やはり国内のインフレがすごかった(いまでもそうかもしれませんが)ことの証なんでしょうね。

 多難な船出となる2期目のカルザイ政権ですが、その任期中に、再び、今回ご紹介したような“反タリバン”の切手が発行されることになるかもしれません。

 なお、バーミヤンの大仏に関するマテリアルというのは、このほかにもいろいろとあるのですが、それらについては拙著『切手が伝える仏像:意匠と歴史』でもご紹介していますので、機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。


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