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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 エジプト・イスラエル和平30年
2009-03-26 Thu 22:26
 1979年3月26日にエジプト・イスラエル和平条約が調印されてから、きょうでちょうど30年になります。というわけで、今日はこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 テルアビブ=カイロFFC

 これは、1977年12月13日のテルアビブ=カイロ間の飛行カバーです。

 1973年10月の第4次中東戦争で、イスラエル軍に打撃を与えたエジプトのサダト政権は、その実績をもとにイスラエルと停戦協定を結び、1967年の第3次中東戦争以来イスラエルに占領されていたシナイ半島の返還交渉に臨みます。

 米ソ両国の主導により、ジュネーブで開催された中東和平会議は、1974年1月、①40日以内に、イスラエルがスエズ西岸の橋頭堡を放棄し、スエズ東岸で運河から約20マイル撤兵する、②エジプトは東岸に一定の兵力を維持する、③両軍の間を国連の休戦監視軍がパトロールする、というシナイ半島の兵力分離協定が成立。部分的にせよ、イスラエル軍撤兵の悲願を実現させたサダトは、さらに同年2月、第3次中東戦争以来途絶していた米国との外交関係を再開し、ニクソンをエジプトに招待。さらに、イスラエルに対する融和的な姿勢を強め、1975年9月にはシナイ半島での第2次兵力分離協定の調印にも成功しました。そして、1977年11月、サダトは、ついに、アラブ国家の元首としてはじめてイスラエルを公式訪問。イスラエル国会で演説し、イスラエルとの単独和平を目指す姿勢を明らかにしています。

 今回ご紹介のカバーは、そうした状況の下で、1977年12月、サダトのイスラエル訪問への答礼として、カイロのメナハウスで行われたエジプトとイスラエルの首脳会談にあわせて、テルアビブからカイロまで運ばれたもので、アラビア語を中心に、英語・ヘブライ語で“平和”の文字が入った印も押されています。また、カバーの余白には、エジプトとイスラエルの国旗とともに星条旗が描かれており、このときの中東和平交渉がアメリカの主導で進められていたことが示されています。

 しかし、サダトの一連の行動は、関係国との個別交渉を通じて問題の解決を図ろうとするイスラエルの方針に沿ったものであり、“アラブの大義”という点からは絶対に許容されえないものとして、アラブ諸国から激しい非難を浴びることになりました。そして、シリア、アルジェリア、リビア、南イエメン、リビアがエジプトと断交します。

 エジプトがアラブ諸国で孤立していく中で、1978年9月には、アメリカのカーター大統領がサダトとベギン(イスラエル首相)をキャンプ・デービットの大統領別荘に呼び、両国に対して、巨額の経済援助と引き換えに、キャンプ・デービット合意を成立させます。

 この合意では、シナイ半島の返還に関してはエジプトの主張が大幅に認められており、両国間の平和条約調印も定めていましたが、イスラエル占領下のヨルダン側西岸とガザ地区に関してはイスラエル側の支配を認める内容となっていました。

 結局、1979年3月に調印されたエジプト・イスラエル平和条約では、①相互の国家承認、②1948年以来続く中東戦争の休戦、③シナイ半島からのイスラエル軍及び入植者の撤退、④スエズ運河におけるイスラエル船舶の自由航行、⑤チラン海峡とアカバ湾を国際水路として認めること、が規定されたわけですが、このため、エジプトは自国の利益のためにパレスチナをイスラエルに売り渡したものとして、他のアラブ諸国から激しく非難され、周辺諸国から完全に孤立します。

 こうして、エジプトはイスラエルを正式に承認した最初のアラブ国家となりましたが、イスラエル・ヨルダン平和条約により、ヨルダンがこれに続いたのは、実に15年後の1994年のことでした。

 なお、このあたりの事情については、以前、『中東の誕生』という本でもまとめてみたことがあるのですが、残念ながら、現在、同書は版元品切れ・重版未定という状況です。その後、手持ちのマテリアルもいろいろと増えてきましたし、そろそろ、本気で改訂版を出すことを考えないといけませんね。

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