2009-03-08 Sun 16:47
きょうは国際婦人デーです。というわけで、現在制作中の『切手が伝える仏像:意匠と歴史』(仮題)に絡めて、こんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、第1次国宝シリーズの第3集(平安時代)として発行された“普賢菩薩”(東京国立博物館)の切手です。 普賢菩薩は、サンスクリットではサマンタ・バドラ。文殊菩薩とともに釈迦如来の脇に従う菩薩で、法華経を唱えて修行する者があれば、六本の牙をもった白象に乗って現れ、守護するとされています。仏像・仏画としては、蓮華座を乗せた六牙の白象に結跏趺坐して合掌する姿で表現されるのが一般的で、オリジナルの作品でも、舞い落ちる花の下で白い象に乗る普賢菩薩が描かれていますが、切手では、菩薩を除いた上下の部分、特に像を描いた下半部がトリミングで除かれました。 ところで、仏典が成立した頃のインドでは女性の権利はほとんど顧みられておらず、仏典には女性が成仏できるとの記述は基本的にはありませんでした。唯一の例外が『法華経』で、その第12番「提婆達多品」の章の後半には、「8歳の龍女が素晴らしい宝珠を釈尊に捧げ、男子に変身して成仏した。したがって、すべての人々は、悟りを求める心を発せば、成仏できる」との趣旨の記述があります。光明皇后が、全国の総国分寺の東大寺に対応する総国分尼寺として建立した寺が“法華滅罪之寺”(法華寺)と名づけられているのも、こうしたことを踏まえたものです。 こうしたことから、法華経の修行者の守護菩薩とされた普賢菩薩は、特に女性の信仰を集めることになりました。まぁ、“男女平等”のもっとも古い実践者の一人ということになるのでしょうね。 さて、現在制作中の『切手が伝える仏像:意匠と歴史』(仮題)は、基本的には、3次元の仏像を扱った本ですので、仏画の切手は基本的には採録していません。ただ、普賢菩薩像の切手というのは少ないので、例外的にこの切手を入れたい誘惑にかられています。ただ、そうすると、他にも数多くある仏画の切手をどうするのか、という問題が出てきてしまって、なかなか頭の痛いところです。もっとも、この切手の単貼外信書状のカバーなんてモノが手に入れば、迷うことなく使ってしまうのでしょうがね。 なお、この切手を含む第1次国宝シリーズについては、拙著『一億総切手狂の時代』で詳しくまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★ 誰もが知ってる“お年玉”切手の誰も知らない人間ドラマ 好評発売中! 『年賀切手』 日本郵趣出版 本体定価 2500円(税込) 年賀状の末等賞品、年賀お年玉小型シートは、誰もが一度は手に取ったことがある切手。郷土玩具でおなじみの図案を見れば、切手が発行された年の出来事が懐かしく思い出される。今年は戦後の年賀切手発行60年。還暦を迎えた国民的切手をめぐる波乱万丈のモノ語り。戦後記念切手の“読む事典”<解説・戦後記念切手>シリーズの別冊として好評発売中! 1月15日付『夕刊フジ』の「ぴいぷる」欄に『年賀切手』の著者インタビュー(右上の画像:山内和彦さん撮影)が掲載されました。記事はこちらでお読みいただけます。 もう一度切手を集めてみたくなったら 雑誌『郵趣』の2008年4月号は、大人になった元切手少年たちのための切手収集再入門の特集号です。発行元の日本郵趣協会にご請求いただければ、在庫がある限り、無料でサンプルをお送りしております。くわしくはこちらをクリックしてください。 |
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