2008-04-20 Sun 11:51
今日(4月20日)は日本の郵便創業の記念日で、例年ですと、「切手趣味週間」の記念切手が発行される日です。(今年は、曜日の関係で18日の金曜日に発行されました)
というわけで、去年・一昨年の先例にならい、今年も、本日付けで刊行の『(解説・戦後記念切手Ⅵ)近代美術・特殊鳥類の時代 切手がアートだった頃 1979-1985』で取り上げた切手の中から、この1点をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます) ![]() これは、25年前の1983年の趣味週間切手として発行された歌麿の「台所美人」です。今回の『近代美術・特殊鳥類の時代』でカバーしている年代のうち、1981~84年の4年間は、春信・清長・歌麿・写楽という、かつて1950年代の趣味週間切手に登場した画家(の作品)が再び登場した時期に当たっています。 さて、今回ご紹介の切手に取り上げられている「台所美人」は、大判2枚続きの錦絵で、松平定信による寛政の改革で、浮世絵版画の刊行にさまざまな制約が課せられた後に制作されました。 題名の通り、台所で働く女性の群像を取り上げられたものですが、左の切手の手前、茄子の皮を剥く女性が鬢を形よく張るために鯨のヒゲを利用した“びん張り”が使っているさまや、その背後の子供を背負う女性の櫛巻きという髪形、右側の切手の火吹き竹を持つ女性の絣模様の下掛けが現在のスカートのように下半身全体を覆う特殊な仕立て方などは、当時の風俗資料としても興味深いものです。また、勢いよく噴き出した熱気の描写法は、それまでの浮世絵には見られなかった新しい表現で、当時の厳しい制約の中で、女性美の表現に新境地を開拓しようとする画家の心境がうかがえます。 古今東西、政府による文化統制が厳しい時代には、そうした制約と戦うことによって、傑作と呼ばれる作品が生み出されてきたわけで、この作品もその一例ということができましょう。 同じように考えると、たとえば、中国による事実上の植民地支配の下で伝統文化消滅の危機にさらされているチベットなんかでも、文学なり美術なりの分野で歴史に残るような作品がひそかに生み出されているのかもしれません。もっとも、そうした作品が公開されても、中国側はチベット人の作品ではなく、あくまでも“中国人”の作品だと言い張るのでしょうけれど…。 イベントのご案内 4月26日(土)13:00より、東京・浅草の都立産業貿易センター台東館にて開催のスタンプショウ’08会場内にて、拙著『近代美術・特殊鳥類の時代』の刊行を記念してトークイベントを行います。入場は無料で、スタンプショウ会場ならではの特典もご用意しておりますので、是非、遊びに来てください。皆様のお越しを心よりお待ち申しております。 雑誌『郵趣』を読んでみませんか 無料でサンプルをお送りしております。くわしくはこちらをクリックしてください。 |
|
||
管理者だけに閲覧 | ||
|
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
|