2007-12-21 Fri 12:48
日本時間の今日(21日)午前2時ごろ、イギリスのエリザベス女王が、ヴィクトリア女王(1819-1901年)を抜いて、イギリス史上最高齢(81歳243日)の君主となったのだそうです。というわけで、今日はこの1枚を持ってきました。
これは、ペニー・ブラック(イギリスで発行された世界最初の切手)発行160年にあたる2000年の2月15日に発行された切手で、ペニー・ブラック発行時のヴィクトリア女王と現在のエリザベス女王の肖像がならべて取り上げられています。同じデザインの切手は、この10年前、ペニー・ブラック150年のときにも発行されていますが、今回は一部の目打の大きさが異なるシンコペーション目打になっているのが特色です。 額面に“1st”と入っていますが、これはファースト・クラス(優先配達:まぁ、速達のようなものです)の郵便料金相当を意味していて、現在でもファースト・クラスの郵便に使えます。ちなみに、当時の売価は26ペンスでした。 さて、ペニーブラックに取り上げられたヴィクトリア女王の肖像は、1837年11月、女王のギルドホール訪問を記念して作られたメダル(彫刻者のウィリアム・ワイオンにちなんで“ワイオンのメダル”と呼ばれている)に刻まれた肖像を基に作られたもの。女王がまだ10代の頃の肖像です。 一方、手前のエリザベス女王の肖像は、1967年以来現在まで、40年間に渡ってイギリスの切手に使われているもので、アーノルド・メイチン(日本では習慣的に“マーチン”とよばれていますが)による石膏像が元になっています。 切手や紙幣に肖像が使われる大きな理由の一つに、人間の顔というのは微妙な変化もすぐに気がつくので、偽造されにくいという点があります。この観点からすると、若い頃のすべすべの肌よりも、年齢を重ねて皺や弛みが出てきたほうが、チェックポイントが増えるので切手や紙幣としてはふさわしいということになります。その意味では、エリザベス女王の肖像も、年相応のものに逐次改めてきても良かったのではないかと思わないでもありません。まぁ、いまさら40年も使ってきたデザインを一新するというわけにも行かないんでしょうけど。 まぁ、くどくどと理屈を言ってみたところで、イギリスの場合は女王陛下ご自身が肖像のデザインをチェックするということのようですので、やはり、ご本人としては若々しい肖像の方がお好みということなんでしょうね。 ちなみに、現役の国王陛下として在位が最年長なのはタイのラーマ9世(プミポン国王)の61年でエリザベス女王は第2位ですが、実年齢としては、ラーマ9世は先日80歳になったばかりですから、女王の方が年上ということになります。 それにしても、エリザベス女王もラーマ9世も、80過ぎてなお、日々の激務をこなすその体力と気力はすごいですねぇ。ようやく、半分の40になったばかりの僕なんか、ちょっと根をつめただけでぐったりしてしまうのですから、情けない限りです。爪の垢でも煎じて飲ませていただきたいところですが、陛下の“爪の垢”を入手することじたいが僕たち民草にとっては最大の難関ですな。 |
偽造防止としての肖像に関しては、肌の柔らかい表現の方が、皺が多い顔よりも(特に凹版彫刻の場合)難しい部分もあるようです。
もっとも、マーチンシリーズが40年も続いている理由は、確かに若い顔の方がいいということが真相のようですね。(カナダの通常切手にはおばあさんになった肖像が使われていますけど、) #1084 コメントありがとうございます
xeno様
そういえば、どこぞの国の皇太子妃が、ご成婚記念切手の試刷を見せられたとき、凹版印刷の自分の肖像をみて「私はこんなにしわくちゃのおばぁちゃんじゃない」と激怒。そのために、切手の発行が大幅に遅れてしまった、という噂話を聞いたことがあります。 そのときは、(それが事実なら)なんと狭量な人物だろうとあきれたものですが、後に、精神を病んで満足に公務ができなくなったという話をきくと、どうやら、当時からその兆候があったのかな、とついつい思ってしまいます。 |
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