こないだ、日本とバハレーンのサッカーの試合があったと思ったら、明日はタイで北朝鮮との試合があるそうで。僕はサッカーにはほとんど全く興味がないので(まぁ、サッカー切手の原稿を書けとでもいう依頼がどっかから降ってくれば、その瞬間から、にわかサッカーファンになるくらいのことは、朝飯前の芸当ですがね)、多分、明日の試合もろくに見やしないのですが、それでも、物書き稼業という商売柄、世間様の話題についていく努力だけは怠らないつもりです。
北朝鮮といえば、2001年に『 北朝鮮事典―切手で読み解く朝鮮民主主義人民共和国 』なんて大それたタイトルの本を書いてしまってからというもの、僕の仕事の中では結構、大きなウェイトを占めるようになっています。当然、ああいう国ですから、強烈な切手が多くて(不謹慎な言い方をすれば)なかなか面白いのですが、今回の『反米の世界史』でご紹介したものの中では、こんなの(↓)が“お気に入り”です。
この切手は、1969年9月、「“アメリカ帝国主義”に反対するジャーナリストの国際会議」(なるものが開催されたんだそうです。はい)を記念して発行されたもので、「ペンは剣より強し」の言葉の通り、ジャーナリストのペンという銃剣で、核兵器を傍らにした当時のアメリカ大統領ニクソンがやっつけられているデザインになっています。左側のシンボルマークは、世界各国の(肌の色の違う)ジャーナリストの腕が一つのたいまつ(ペン先は怒りと正義感で燃えている!)を掲げ、団結している様子を表現しています。切手の下のほうには、ご丁寧に、ずたずたに引き裂かれた星条旗まで転がっています。国家の名前で発行する公式の切手で、ここまでやってくれると、主義主張への賛否は別として、ある種の潔ささえ感じられます。
北朝鮮では、この切手以外にも数多くのどぎつい反米切手を発行していますが、近刊の『反米の世界史』でも、もちろん、その代表的なものをご紹介しています。あわせて、同書では、第二次大戦から朝鮮戦争の終結にいたるまでの、アメリカと朝鮮半島との複雑なドラマについても、かなりのスペースを割いて、切手や郵便物に刻まれた痕跡をたどっています。
6月16日、講談社現代新書の一冊として刊行予定の『反米の世界史』、是非、ご一読いただけると幸いです。