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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ビルマロード
2007-09-28 Fri 09:04
 先月から反政府デモが続いていたビルマ(軍事政権の自称はミャンマーですが、この呼称を認めていない人も多い)で、軍事政権がデモ隊への武力弾圧を一段と強め、僧侶1500人以上を拘束するとともに、集まった市民らを自動小銃などで強制排除。日本人ジャーナリストも亡くなりました。

 一連のニュースを見ていて、ふと、こんな切手を思い出して持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

      ビルマロード

 これは、1991年にアメリカが発行した“第2次世界大戦50年シリーズ”の1枚で、中国支援のためのビルマロードが取り上げられています。これは、アメリカ側が、「自分たちにとっての第2次大戦は日本の侵略を受けた中国を支援することから始まった」という歴史認識を持っていることを示すものと考えてよいでしょう。

 ところで、一口にビルマルートといっても、新旧2つの陸路と1つの空路があります。古来の交易路に沿って作られた最初のビルマルートは、英領ビルマのラングーンに陸揚げした物資を、ラシオ(シャン州北部の町)まで鉄道で運び、そこからトラックで雲南省昆明まで運ぶ輸送路でした。しかし、このルートは太平洋戦争の開戦後、日本軍が全ビルマを平定したことで、1942年に遮断されます。

 その後、米英はインド東部からヒマラヤ山脈を越えての空輸に切り替え、中国への支援を続けていましたが、1945年1月、北ビルマの日本軍を駆逐して、英領インドのアッサム州レドからビルマを経て昆明まで至る新自動車道路(レド公路)が開通しました。

 さて、かつては中国にとっての命綱だったビルマですが、現在では、中国こそがビルマにとっての命綱になっています。

 すなわち、アウンサン・スーチーの軟禁から今回のデモ隊の武力鎮圧にいたるまで、国内の批判勢力と民主化要求を徹底して抑えこもうとしていることで、ビルマの軍事政権は欧米諸国から強く非難されており、国際的にも孤立しています。ところが、そうしたビルマにつけこむかたちで、中国は軍事政権に肩入れし、天然ガスを初めとするビルマの資源を確保することに躍起になっています。また、みずからも共産党の一党独裁体制を取っている中国にとって、周辺諸国で“民主化”が進み、それが自国に波及することはなんとしても避けたいという思惑もあり、そのことが、ますます、ビルマの軍事政権に親和的な姿勢をとる要因にもなっているわけです。

 なお、今日のラストは当初「まぁ、60年前の日中戦争のときのビルマロードの恩義を忘れずにいるというわけではないのでしょうが…」といった感じでしめようかと思っていたのですが、よくよく考えると、あの国は現在なお“抗日戦争”の話を要所要所で持ち出してくるんですよねぇ。結局、今も昔も、我々日本人にとっては、中国とビルマがくっつくとロクなことにならないのだけは、確かなようです。
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この記事のコメント
ということも感じられる切手ですね。(でなければ、中国共産党軍の討伐を後押ししたアメリカが、「中華人民共和国」との関係を無視して、「中華民国」支援を記念するような切手を出すわけがないですから。)

 いずれにせよ、日本軍は中国の広大な地の利と、この「ビルマルート」等によるアメリカ等の支援によって「消耗戦」を強いられることになります。結果日本は品不足となり軍需物資等の補給にも悪影響が出て来たため、この「ビルマルート」をたたく努力をするのですが、結局日中戦争中には決め手がでなかったようです。
 「日本は戦争に行き詰まると、戦争を起こした」と、この一連の流れを見て、あるアメリカ歴史研究者はコメントしましたが、結果として太平洋戦争の淵源の一つになった点では、忘れてはいけないトピックでしょう。
2007-09-28 Fri 09:46 | URL | muraki #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 muraki様
 ホントは、ビルマ・ルートを使って重慶→ラングーン→インドというルートで運ばれたカバーを持ってくればよかったんですけど、探し出せず、紙芝居切手で逃げてしまいました。まぁ、 ビルマの軍事政権とその背後にいる中国という構図は当分変わらないでしょうから、いずれ、ご紹介したいと思います。
2007-10-05 Fri 01:46 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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