2007-04-16 Mon 00:30
昨夜(15日)は、夕食後、原稿を書かずについついテレビで映画「ブラックホーク・ダウン」(1993年にソマリアで起こった米軍とゲリラの市街戦を描いた戦争映画)を見てしまいました。テレビを見ながら、手元にこんなカバー(封筒)があったことを思い出して、引っ張り出してきてみました。
これは、内戦下のソマリアの首都・モガディシュ(モガディシオ)からイギリス宛に差し出されたカバーです。 1977年、隣国のエチオピアでソマリ人による反政府暴動が起こると、バーレ独裁体制下のソマリアはこれに介入しましたが、ソ連ならびにキューバの支援を受けたエチオピア政府軍に撃退されます。この敗戦に加え、経済失政によって国内の格差が拡大したこともあって、バーレ独裁に対する国内の不満が噴出。1980年代に入ると、反政府勢力による武装闘争が本格化し、ソマリア全土は内戦状態に突入。バーレ政権の支配はモガディシュやベルベラなどに限られた地域にしか及ばなくなりました。 1991年1月、モハメッド・ファッラ・アイディードひきいる反政府勢力の統一ソマリア会議(USC)が首都のモガディシュを制圧。バーレは国外に追放され、ソマリア民主共和国は解体されます。しかし、バーレ追放後、USC内部の権力闘争から内戦はさらに悪化。以後、国土は分断され、現在にいたるまで事実上の無政府状態が続き、ソマリア正統政府としての正規の切手発行も事実上ストップしています。 その後、ソマリア郵政の名を騙ってさまざまな切手が発行されていますが、これらが実際にソマリア国内で使われる可能性はおそらくほぼゼロで、実際には郵便がどうなっているのか、外部の我々にはうかがい知れない状況が続いています。 今回ご紹介のカバーは、切手は貼られておらず、料金収納済みを示す“PORT PAYE”の印を押して処理されています。モガディシュ局の印も押されていますが、あいにく、日付がほとんど読めません。ただ、宛先のBBCがSOMALI SECTIONという独立の部署を置くようになるのは内戦が国際問題化してからのことでしょうから、内戦期のカバーであることはまず間違いないとみてよいでしょう。 このカバー一通だけでは内戦下のソマリアの郵便事情の概要などわかるはずもないのですが、それでも、ある時期、モガディシュでも料金収納印を用いた郵便が行われていたことだけは、とりあえず確認できたといえそうです。おそらく、欧米の郵趣誌には内戦下のソマリアの郵便事情についてのレポートも載っているのでしょうが、日本ではあまり話題として取り上げられることもないようですので、ちょっとご紹介してみたという次第です。 <お知らせ> 4月29日(土)14:30~、東京・浅草で開催のスタンプショウ会場で、拙著『沖縄・高松塚の時代』の刊行を記念して講演+サイン会を行います。入場無料ですので、是非、遊びに来てください。 |
興味深いですね。
内戦期のボスニアやアフガン、ソ連崩壊後の地方郵政とかにも関心があります。 なかなか情報が流れませんね。 #588 コメントありがとうございます
ななし様
アフガンの内戦期の郵便については、バクタル・ポスタル・サービスという民間会社が外信便を取り扱っていたという記事はどこかで読んだことがあるのですが、その実物は見たことがありません。いつか手に入れたいとは思っているのですが・・・。 興味深いお話、ありがとうございます。
以前、ソマリアについてお伺いしてご教示いただきましたが今回は興味深いスタンプレスカバーを拝見でき嬉しく思います。 政権崩壊頃から「発行」されていたイタリア印刷局製の「ソマリア切手」、エキゾチックなアラビア風図案に惹かれ、6年前の東京国際切手展に政府?ブースを出していたこともあり、随分熱心に集めてしまいました。 意外と出来が良いのでした。 「西サハラ」切手ってのもありましたけど・・・ 「ソマリア切手」に使ったお金をまともな切手に使っていれば、もう少しましなコレクションが出来ていたでしょうに。 最近、再び彼の地では多くの方が犠牲になっているとの由、一刻も早く平和が訪れることを願ってやみません。 幻のソマリア切手の図案なような平和な国になりますように。 これからも興味深いお話を楽しみにしております。 #594 コメントありがとうございます
えびす様
いつもありがとうございます。喜んでいただいたようで、嬉しいです。 ソマリアの切手ですが、独立後しばらく、政情が安定していたときのモノはちょっとイタリア風のテイストもあって良い感じですよね。 これからもよろしくお付き合いください。 |
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