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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 年賀状の切手
2023-01-04 Wed 03:00
 毎年のことですが、“郵便学者”という看板を掲げて生活している関係から、僕は毎年、年賀状には干支にちなんだ切手を取り上げることにしています。もっとも、ただ単に干支の切手を持ってくるだけではつまらないので、①できるだけ他の人が使いそうにないモノ、②その年の仕事の予告編になりそうなモノ、③可能な限り、干支を取り上げた年賀切手は除く、という基準で選んでいます。きょう(4日)は仕事始めでオフィスで僕の年賀状をご覧になるという方もあると思いますので、今回の年賀状の切手について簡単にご説明いたします。(画像はクリックで拡大されます)

      ウクライナ語のアルファベット(1984・野兎)

 これは、2018年11月9日、ウクライナが発行した”ウクライナ語のアルファベット”の切手シートのうち、“З”で始まる語の例として、“Заєць (野うさぎ)”を描いた1枚です。

 元日のご挨拶でも申し上げましたが、現在、昨年11月に刊行して拙著『現代日中関係史 第1部 1945-1972』の続編となる『同第2部 1972-2002』と、昨年(2022年)刊行するつもりで実現できなかったウクライナ関連の書籍についての作業を並行して行っております。このため、中国およびウクライナのウサギ切手の中から何を選ぼうかと迷ったのですが、中国関連の切手は過去にも取り上げたことがありましたので、今回はウクライナのウサギ切手の中から選ぶことにしました。

 さて、ウクライナ語はスラブ諸語のひとつで、キリル文字を使います。このため、ロシア語と似ているとされることも多いのですが、実際には、他のスラブ諸語との語彙共通度は、ベラルーシ語が84%、ポーランド語が70%、スロヴァキア語が68%、ロシア語が62%で、ロシア語とはかなり語彙が違っています。62%という共通度は英語とオランダ語の関係とほぼ同じですから、ロシア語とウクライナ語は全く別の言語と考えるのが適切でしょう。また、音素の数は、スラブ諸語の中で最も多い48です。

 このため、ウクライナ語の表記にはロシア語とは異なる文字が使われます。具体的には、ウクライナ語に使われる文字が34文字なのに対してロシア語に使われるのは33文字で、ウクライナ語にあってロシア語にない文字は、ї, і, є, ґ の4文字と硬音記号のアポストロフィです。逆に、ロシア語にあってウクライナ語にない文字はё, ъ, ы, э の4文字で、残りの29文字は両言語に共通で使われます。

 ちなみに、今回ご紹介の切手が発行された2018年は、2014年のロシアによるクリミア併合を経てウクライナのロシア離れが加速していた時期で、ウクライナ外務省は “Kyiv Not Kiev”キャンペーンを大々的に展開し、主として、欧米諸国に対してウクライナの地名の表記については、ロシア語ではなく、ウクライナ語に近いものとするよう求めていました。今回ご紹介の切手も、その一環として、(ロシア語と異なる)ウクライナ語の独自性を広くアピールする意図を込めて発行されたものと考えられます。

 なお、例によって、年賀状の投函は年末ぎりぎりになってしまいましたので、まだお手元に届いていない方もあるかと思います。早々に賀状をお送りいただきながら、僕の賀状がまだ届いていないという方々におかれましては、今しばらくお待ちいただきますよう、伏してお願い申し上げます。 

 また、詳細については、こちらをクリックして、内藤総研サイト内の当該投稿をご覧ください。なお、内藤総研の有料会員の方には、本日夕方以降、記事の全文(一部文面の調整あり)をメルマガとしてお届けする予定です。


★ 放送出演・講演・講座などのご案内 ★

 2023年1月13日(金) 05:00~  おはよう寺ちゃん
 文化放送の「おはよう寺ちゃん」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から8時までの長時間放送ですが、僕の出番は6時からになります。皆様、よろしくお願いします。

 1月28日(土)開講! よみうりカルチャー 北千住
 エリザベス女王の現代史 毎月第4土曜日 13:00~14:30
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 よみうりカルチャー 荻窪
 宗教と国際政治 原則毎月第1火曜日 15:30~17:00
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 武蔵野大学のWeb講座 
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      現代日中関係史表_第1部

 日本郵趣出版の新レーベル「郵便×歴史シリーズ」の第一弾の企画として、切手という切り口から第二次大戦後の日中関係を読み解く『現代日中関係史』。その第1巻となる本書は、第二次大戦後、わが国が中華人民共和国と国交を樹立(いわゆる国交正常化)する1972年9月以前を取り扱っています。なお、1972年の国交”正常化”以降については、2023年3月に刊行予定の第2巻でまとめる予定です。

 * ご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各ネット書店での注文ページのリンクがあるほか、主要書店の店頭在庫も確認できます。また、販売元の郵趣サービス社のサイト、スタマガネットの特設サイトサイトでは、本書の内容見本をご覧いただけます。 

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