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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 風水おそるべし
2007-02-21 Wed 00:44
 中国南西部・雲南省富民県の当局が、農村住民の年平均収入の約140倍に当たる47万元(約750万円)を投じ、採石場跡地などがあった山肌にペンキを吹き付けて“緑化”していたことが国内報道で判明しました。なんでも、“はげ山”の真向かいに建設している中国共産党同県委員会の新庁舎の風水を良くするのが動機だとか…。

 何ともトホホな話ですが、たかが風水・されど風水ということで思い出した話がありましたので、こんな葉書を持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

香港中銀タワー完成

 これは、1997年の返還を前にした1990年5月、香港の中国銀行ビルの新庁舎(以下、中銀タワー)の落成にあわせて発行される予定だったものの、不発行に終わった中国の葉書です。

 中銀タワーの完成当時、この建物を見た香港の風水師は仰天したそうです。というのも、ビルの形状が包丁のように見えるだけでなく、その刃の面が、一方はイギリスの総督府の方向に、他方は香港上海銀行(香港金融界の支配者とされるイギリス系の銀行)の方向に、それぞれ、向けて建てられていたからです。

 はたして、中銀タワーができてから総督府の敷地内の大木が枯れ、当時のウィルソン総督も怪我をしてしまいます。このため、香港社会は、中国政府が返還前にイギリスの香港支配の拠点に殺気を送るためにこのようなビルを建設したと大騒ぎになり、総督府側もこれを放置できなくなりました。その結果、総督府構内の中庭の池は四角形から円形に改められ、その側に柳の木を三本植えるという風水上の対抗手段が取られています。

 一方、総督府同様、中銀タワーから刃先を向けられることになった香港上海銀行の新社屋は、中銀タワーに先立ち1986年に完成していましたが、こちらは、1階部分が4本の柱に支えられて空洞になっており、地に足がついていないことから、返還後、銀行の金をイギリスへ持ち出すには最高の風水といわれました。じっさい、香港上海銀行は1990年にロンドンにグループの持株会社、HSBCホールディングスを設立し、その傘下に入っています。

 こうした風水戦争は、その後も続けられ、中銀タワーの殺気をそぐため、中環にはエンターテインメント・ビルが、湾仔にはセントラルプラザが、それぞれ建てられました。この二つのビルは、いずれも、刃物に対抗するためにヤスリの形を意識して造られています。

 僕なんかからすると、風水なんてのは占いの類の一種という印象が拭えないのですが、中国人にとっては、町の景観を一変させるだけのコストを払っても惜しくないほど重要なものなんでしょう。香港での騒ぎを考えれば、今回の“はげやま”騒動なんて小さい話なのかもしれませんが、こういう感覚には、ちょっとついていけないものがあります。

 ちなみに、今回ご紹介の葉書が不発行に終わったのは、政治的な理由ではなくて、単純に、英文表示で“完成”を意味するcompletionをcomplitionと誤植したからなのだとか。なんだか、エネルギーを使うところを間違ってるような気がしますねぇ。

 さて、現在、今年7月の香港返還10周年にあわせて、以前刊行した拙著『切手が語る香港の歴史』の全面リニューアル版を刊行すべく、執筆作業を続けています。例によって原稿の執筆は遅々として進まないのですが、風水によって、本当に仕事がはかどり、本が売れるというのなら、壁の色をペンキで塗ったくるくらいのことはやってみても構わないという気分になっている今日この頃です。ただ、結局、本の印税よりもペンキ代の方が高くつくような気がして、なかなか、実行には移せないでいるのですが…。
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