2021-05-10 Mon 00:48
きょう(10日)から愛鳥週間(バード・ウィーク)が始まります。というわけで、きょうは鳥を描く切手の中から、この1枚です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1875年1月1日、外国郵便用として発行された“鳥切手”のうち、雁を描く12銭切手です。 明治4年3月1日(1871年4月20日)に創業された日本の近代郵便制度は、明治5年7月(1872年8月)までにほぼ全土をカバーするようになりました。その反面、外国郵便に関しては、ながらく、日本人は全く手つかずの状況が続き、英米仏の各国は開港地に“郵便局”を開設し、英国は香港切手を、米仏はそれぞれ本国の切手を持ち込んで、海外宛の郵便を行っていました。 このため、明治5年3月1日(1872年4月8日)、明治政府は、まず、英仏米の在日郵便局を利用して外国との郵便交換を行うための「海外郵便手続」を公布。ついで、独自の外国郵便制度を創設するため、駐日米公使デロングの支援の下、米国人のサミュエル・ブライアンを交渉担当者として雇用し、米国との協議を開始します。 その結果、明治6(1873)年2月、日米間で「皇米郵便交換条約」が結ばれ、明治8(1875)年1月1日、日本の外国郵便が正式にスタートしました。ちなみに、創業後の第一便は、西回り航路が1月7日発のネヴァダ号、東回り航路が翌8日発のアルトナ号で、いずれも、米パシフィック・メイル汽船会社の船でした。 さて、外国郵便がスタートした時点での主要国宛の書状基本料金(15グラムまで)は、上海宛が6銭、米国宛が15銭、英国宛が21銭、フランス宛が25錢などとなっていました。このうち、米国宛の15銭という料金については、1年後の1876年1月1日に12銭に値下げすることが当初から決められており、今回ご紹介の12銭切手もそれを見越して発行されたものです。 『漢書』蘇武伝によると、前漢の天漢元(紀元前100)年、蘇武は使者として匈奴に派遣されました。当時、匈奴の単于(君主)の下には、漢の元将軍で匈奴に降っていた虞常がいましたが、虞常は同じく匈奴に降って重用されていた衛律を殺して帰国しようと画策。しかし、この目論見は失敗し、匈奴に滞在していた蘇武も抑留されてしまいます。その後、蘇武の抑留生活は19年もの長きに及びましたが、この間、彼は手紙を雁の足に結びつけて放ち、本国との連絡を取ろうとしました。 このことから、便りや手紙を意味する語として“雁書”ないしは“雁使”という言葉が用いられるとともに、雁は通信の象徴とみなされるようになり、今回ご紹介の鳥切手をはじめ、アジア諸国で広く切手に取り上げられることになりました。 なお、日本の外国郵便の始まりと鳥切手については、拙著『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.1 戦前編』でもご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひお手に取ってご覧ください。 ★ 放送出演・講演・講座などのご案内★ 5月10日(月) 05:00~ 文化放送の「おはよう寺ちゃん」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から9時までの長時間放送ですが、僕の出番は07:48からになります。皆様、よろしくお願いします。 5月15日(土)~ 武蔵野大学の生涯学習講座 5月15日、22日、6月5日、19日、7月3日、17日の6回、下記のふたつの講座でお話しします。 13:00~14:30 「日本の郵便150年の歴史 その1 ―“大日本帝国”時代の郵便事情―」 15:15~16:45 「東京五輪と切手ブームの時代 ―戦後昭和社会史の一断面―」 対面授業、オンラインのライブ配信、タイム・フリーのウェブ配信の3通りの形式での受講が可能です。お申し込みを含め、詳細については、こちらをクリックしてご覧ください。 ★ 『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.1 戦前編』 好評発売中! ★ 2530円(本体2300円+税) 明治4年3月1日(1871年4月20日)にわが国の近代郵便が創業され、日本最初の切手が発行されて以来、150年間の歴史を豊富な図版とともにたどる3巻シリーズの第1巻。まずは、1945年の第二次大戦終戦までの時代を扱いました。今後、2021年11月刊行予定の第2巻では昭和時代(戦後)を、2022年3月刊行予定の第3巻では平成以降の時代を取り扱う予定です。 ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
|
||
管理者だけに閲覧 | ||
|
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
|