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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 アース・デイ
2021-04-22 Thu 00:39
 きょう(22日)は“アース・デイ”です。というわけで、地球を描いた切手の中から、この1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      関東局始政30年・1銭5厘

 これは、1936年9月1日に発行されたのが“関東局始政30年”の記念切手のうち、北東アジアの地図が描かれた地球と鳩を取り上げた1銭5厘切手です。

 1905年9月5日、日露戦争の講和条約として結ばれたポーツマス条約により、日本はロシアが租借していた遼島半島の一部をロシアに変わって租借する権利を獲得しました。これが、いわゆる関東州です。

 中国でいう“関東”とは、本来、山海関(万里の長城)の東側の意味で、本来なら東北部(満洲)全体を指す歴史的な言葉ですが、日本の租借地としての関東州の領域は、遼島半島の普蘭店北方の長陽寺会付近から貔子窩東方の碧流河付近にいたる線より南の地域で、付近の島々を加えると、その面積は約3万平方キロでした。

 この地域は丘陵地帯のため産業は発達しませんでしたが、海岸線の出入が多く、天然の良港に恵まれていました。清朝は半島の先端に位置する旅順を北洋艦隊の基地とし、1898年にこの地を租借したロシアも、それを継承して旅順を軍事都市化します。

 また、ロシアは、在来の漁村であった青泥窪をもとにダルニー市を建設。ここを自由港としました。以後、ダルニー市はこの地域の政治・経済の中心地となり、日本の支配下で大連と改称された後も繁栄は続きました。

 さて、日露戦争の結果、ロシアからこの地域の租借件を引き継いだ日本は、1905年10月、遼陽に“関東総督府”を設置。この地域の統治に着手します。この関東総督府は、満洲軍総司令部が日本に帰国した後の残留部隊を統率する機関でもあったため、関東州では軍政が敷かれていました。

 軍政を廃して、通常の植民地支配が行われるようになったのは1906年9月1日からのことで、それにあわせて、遼陽の関東総督府は廃止され、“関東都督府”が旅順に置かれます。

 都督府は民政部と陸軍部から構成され、関東州の行政だけでなく、満鉄付属地(日本の国策会社・南満洲鉄道株式会社が主な駅周辺で統治していた治外法権地帯)の行政や、日本の治外法権に基づいた満洲各地の警察業務、満鉄付属地に駐留する鉄道守備隊の統率なども行いました。このため、関東都督は陸軍の将官(大・中将)から任じられ、外務大臣・陸軍大臣・参謀総長の監督を受けるという複雑な官制となっていました。

 その後、1919年の勅令で関東庁官制が公布され、関東都督府は“関東庁”に改組され、本庁は大連に移転します。以後、軍人でなくても関東長官に就任できることになりましたが、そのかわり、満洲に駐留する軍隊を統率するための機関として、別に関東軍司令部が設けられることになりました。ちなみに、後に張作霖の爆殺事件や満洲事変を起こした“関東軍”は、このときの官制改革で関東都督府陸軍部から独立したことで、正式に発足したものです。

 こうして、関東州は日本の大陸政策の拠点としての地位を築いていったわけですが、1932年に満洲国が建国されると、満洲国が満鉄付属地の施政権を接収したこともあって(ただし、1937年までは一部、日本による“治外法権”が残っていた)、関東州のあり方も変容を迫られます。その結果、1934年、日本政府は満洲国の首都であった新京(現・長春)に内閣総理大臣の監督する“関東局”を設置。関東庁は、その監督下に置かれることになり、関東庁長官は、満洲国駐留の日本の全権大使が任命することとされました。

 今回ご紹介の切手は、いままで述べてきたような関東州の統治が始まってから(関東都督府の設置から起算して)30周年にあたるのを記念して発行されたもので、関東局の郵政事業を管轄していた関東逓信局によって企画されました。ただし、切手を発行する権限は、当時の日本では逓信省(後の郵政省)にしか認められていなかったため、形式上、この記念切手も逓信省が発行した体裁を取っています。ただし、実際には関東逓信局で切手を制作し、発売も関東局の管内に限られていました。

 切手全体の構図は、勝利のシンボルである月桂樹と平和のシンボルである鳩、そして発展・繁栄のシンボルである旭光が満洲国のエリアと関東州、朝鮮半島を取り囲むものとなっています。このデザインには、これらの地域が日本の支配によって平和と繁栄を享受しているのだということを示す意図が込められていると見てよいでしょう。

 なお、1945年以前の日本切手とその歴史については、拙著『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.1 戦前編』でもいろいろまとめておりますので、機会がありましたら、せひお手に取ってご覧いただけると幸いです。


★ 放送出演・講演・講座などのご案内★

 4月23日(金) 15:00~ 
 東京・浅草の東京都立産業貿易センター台東館で開催のスタンプショウ会場にて、拙著『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.1 戦前編』の刊行記念トークを行います。入場無料・事前予約不要ですので、お気軽にご参加ください。なお、スタンプショウの詳細はこちらをご覧ください

 4月24日(土)  倉山塾東京支部特別講演
 靖国神社参拝と講演がセットになった有料イベント(参加費は3000円、高校生以下1000円)で、スケジュールは以下の通りです。
 14:15 集合 靖国神社 大村益次郎像前 → 参拝(昇殿参拝ではありません)後、講演会場へ移動
 15:00 講演会の受付開始
 15:30-17:00 内藤の講演(拙著『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.1 戦前編』の内容が中心ですが、前日のスタンプショウとは内容が異なるので、両方ご参加いただいても問題ありません)
 * 終了後、懇親会の予定あり(別途予約が必要です)
 お申し込みなどの詳細はこちらへ。一人でも多くの方のご参加をお待ちしております。

 4月26日(月) 05:00~  
 文化放送の「おはよう寺ちゃん 活動中」に内藤がコメンテーターとして出演の予定です。番組は早朝5時から9時までの長時間放送ですが、僕の出番は07:48からになります。皆様、よろしくお願いします。

 5月15日(土)~ 武蔵野大学の生涯学習講座
 5月15日、22日、6月5日、19日、7月3日、17日の6回、下記のふたつの講座でお話しします。 
 13:00~14:30 「日本の郵便150年の歴史 その1 ―“大日本帝国”時代の郵便事情―」
 15:15~16:45 「東京五輪と切手ブームの時代 ―戦後昭和社会史の一断面―」
 対面授業、オンラインのライブ配信、タイム・フリーのウェブ配信の3通りの形式での受講が可能です。詳細については、武蔵野大学地域交流推進室宛にメール(lifelong★musashino-u.ac.jp スパム防止のため、アドレスの@は★に変えています)にてお問い合わせください。

★ 『切手でたどる郵便創業150年の歴史 vol.1 戦前編』 好評発売中! ★

      郵便創業150年の歴史ー1表紙 2530円(本体2300円+税)

 明治4年3月1日(1871年4月20日)にわが国の近代郵便が創業され、日本最初の切手が発行されて以来、150年間の歴史を豊富な図版とともにたどる3巻シリーズの第1巻。まずは、1945年の第二次大戦終戦までの時代を扱いました。今後、2021年11月刊行予定の第2巻では昭和時代(戦後)を、2022年3月刊行予定の第3巻では平成以降の時代を取り扱う予定です。

 ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 

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