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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 バングラデシュ独立戦争50年
2021-03-26 Fri 01:21
 きょう(26日)は、1971年3月26日、バングラデシュ独立戦争が開始されたことにちなみ、同国では“独立記念日”になっています。ことしは、50周年という節目の年でもありますので、こんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      バングラ・3月7日演説

 これは、1997年にバングラデシュが発行した“独立25周年”の記念切手のうち、独立戦争の導火線となったムジブル・ラーマン(後のバングラデシュ初代大統領)による1971年3月7日の演説の場面を描いた1枚です。
 
 1947年に英領インド帝国が解体された際、現在のバングラデシュに相当する地域は東パキスタンとして、現在のパキスタンに相当する西パキスタンとともにパキスタン・イスラム共和国を構成することになりました。しかし、パキスタン国家の政治的な実権を握っていたのは西パキスタンで、東パキスタンで生産されるジュートによってもたらされる外貨は、西パキスタンに優先的に支出される状況が続きます。

 また、東パキスタンの住民の大半がベンガル語を母語としていたのに対して、パキスタン国家としての公用語は西パキスタンの主要言語であったウルドゥ語であり、そのことに対する東パキスタン側の不満も根強いものがありました。

 さらに、1970年の集中豪雨、ボーラ・サイクロンによって東パキスタン国土のほとんどが水没、17万人に上る死者が出たにもかかわらず、パキスタン政府の西パキスタン偏重政策は変わらず、東西の亀裂は決定的になります。

 こうした状況の下で行われた1970年の総選挙では、東パキスタンを地盤とするアワミ連盟が“バングラ民族主義”を掲げ、東パキスタンの選挙区で162議席中160議席を獲得。すると、アワミ連盟の躍進が東パキスタンの分離・独立につながることを恐れたパキスタン政府は、選挙後、なかなか議会を開催しようとしませんでした。

 そこで、1971年3月7日、アワミ連盟は10万人の大集会を開催。党首のムジブル・ラーマンは、パキスタン中央政府への非協力政策を宣言し、「今回の闘いは解放のための闘いであり、独立のための闘いである」、「すべての家を要塞にし、諸君の持つ力のすべてで敵に抵抗しよう。犠牲の教訓に打ち勝ち、もっと多くの血を捧げよう。神は喜び、我々はこの地を人々に解放する」と訴えて独立派を鼓舞しました、今回ご紹介の切手は、この演説の場面を描いたものです。

 一方、独立運動の高揚を警戒した中央政府は、3月25日、ムジブル・ラーマンらアワミ連盟の指導者を逮捕。さらに、パキスタン軍による東パキスタン住民の虐殺事件が発生します。これに対して、翌26日、陸軍のジアウル・ラーマン少佐が「我々旧東パキスタンは旧西パキスタンに対し自由解放のための戦いを開始する」と宣言し、パキスタン独立運動の火ぶたが切って落とされました。なお、ムジブル・ラーマンによる3月7日演説は、26日に始まる独立運動を導いたとして、2017年、ユネスコの世界記憶遺産に登録されています。

 その後、4月10日に独立派が“バングラデシュ人民共和国”の独立が宣言すると、パキスタン政府は軍を空輸して武力鎮圧を試み、さらに、反独立派のイスラム過激派組織がベンガル人の大量殺戮を行ったため、9ヶ月で300万人もの死者が発生しました。

 この動きに目をつけたインドは、パキスタンを弱体化させるために、東パキスタンからインドへの難民流入を“人口学的侵略”として、1971年12月3日、パキスタンに侵攻し、第3次印パ戦争が勃発。すると、圧倒的な兵力を誇るインド軍の前にパキスタン軍はわずか10日余りで降伏。12月16日、パキスタンはバングラデシュの独立を承認し、ラーマンは解放されました。
 

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