現在、時事通信社の配信用コラムとして「切手で世界旅行」という短期連載(12回分)の原稿を書いています。
ご承知のように、時事通信社は、同社自体が新聞を発行しているわけではなく、マスコミ向けにニュースなどを配信する通信社です。というわけで、時事通信社に原稿を提出しても、それが実際にマスコミ向けに配信され、地方紙などに掲載されるのはいつのことになるのか、筆者である僕は、掲載紙を見てはじめて知るというのが実情です。
で、つい先日、ようやく「切手で世界旅行」の掲載が『山形新聞』12月5日号から始まったということがわかりましたので、これから、折を見てこのブログでも「切手で世界旅行」の内容をご紹介して行きたいと思います。
さて、栄えある連載の第1回目のお題は、エジプトのスフィンクスとピラミッド。というわけで、こんな切手を取り上げてみました。(画像はクリックで拡大されます)

カイロの近郊、ギーザのピラミッドとスフィンクスは、紀元前2500年代の建設といわれています。はやくも紀元前2世紀にはフィロンによって「世界の七不思議」に挙げられていたくらいですから、世界最古の観光地の一つといってよいでしょう。幕末の1864年には、ヨーロッパを歴訪した外国奉行の池田筑後守ら一行がギーザに立ち寄り、スフィンクスを背景に撮影した記念写真なんてものも残っていますから、日本人観光客の歴史も浅からぬものがあります。
ところで、世界最初の切手がイギリスで発行されたのは1840年のことでしたが、1866年にはエジプトでも切手の発行が始まりました。最初の切手はアラビア文字による模様的なデザインでしたが、1867年からはギーザのスフィンクスとピラミッドを描く切手が日常的に使われはじめます。
19世紀の切手は、国王の肖像や紋章、額面数字を大きく描いたものなど、実用本位ではありますが、退屈なデザインのものが主流でしたから、いかにもエジプトらしさを感じさせるスフィンクスの切手は、当時としては非常に魅力的な存在でした。じっさい、ピラミッドやスフィンクスの絵葉書の絵面にスフィンクスの切手を貼って差し出すということも、当時の欧米人旅行社の間では盛んに行われていました。
さて、今回ご紹介しているのは1867年に発行された最初のスフィンクス切手のうちの2ピアストル切手。地中海に面したエジプトの港町、アレキサンドリアの印刷所で外国人によって作られたものです。エジプトのスフィンクス切手には、カイロの国営ブーラーク印刷所で作られたイモ版のような素朴なものから、デラルー社による精緻なものまで、印刷物としてのクオリティには大きなばらつきがありますが、この切手は、その中間くらいの出来栄えといったところでしょうか。
スフィンクスの両脇に配されたオベリスクや遺跡風の柱も良い味を出しています。
「切手で世界旅行」(もしかしたら、掲載時には別のタイトルが付けられているかもしれません)では、これから、世界各地の主な観光地を切手でご紹介しつつ、その国の切手についてもチョコッと紹介してみようという企画です。なにせ、500字程度のスペースしかありませんので、あまり込み入った話はできませんが、一人でも多くの方に、“外国のかけら”としての切手の魅力をご理解いただけるよう、努力して行きたいと思います。皆さんも、地元紙等で拙稿を見かける機会がありましたら、是非、ご一読いただけると幸いです。