2021-02-20 Sat 11:50
国際オリンピック委員会(IOC)は、きのう(19日)、組織的なドーピングを行っていたとして、2022年12月までロシア選手団を主要国際大会から除外したスポーツ仲裁裁判所の裁定を受け、2021年8月に開催予定の東京五輪と2022年2月に開催予定の北京冬季五輪に個人として参加するロシア選手に関して、ユニフォームなどに記載する略称を、通常の“RUS”ではなく、“ROC(ロシア五輪委)”とすることを決定しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
![]() これは、2011年11月25日にロシアが発行した“ロシア五輪委員会100周年”の記念切手で、左上には、ロシア国旗と同じ白、青、赤の3色で炎を模したROCのエンブレムが入っています。 ロシアがオリンピックに参加したのは、帝政時代の1900年に行われたパリ大会からですが、当初は、国内の五輪委組織はありませんでした。ロシアで国内五輪委がサンクトペテルブルクで結成されたのは、1912年のストックホルム大会を控えた1911年3月のことで、初代会長、ヴャチェスラフ・ スレズネフスキーの下、ロシア革命をはさんで1918年まで活動を継続しました。 しかし、革命後のソヴィエト政府および1922年末に成立したソヴィエト連は国民の出国を厳しく制限したため、1920年のアントワープ大会以降、ソ連選手団は五輪に参加しませんでした。 しかし、第二次大戦後の東西冷戦の中で、スターリンは国威発揚の手段としてのスポーツに改めて着目。この結果、ソ連はそれまでの政策を転換し、国際大会へも積極的に参加することになり、1951年4月、ソ連五輪委が国内五輪委として承認されてIOCに加盟。1952年のヘルシンキ大会には初めてソ連代表を派遣し、陸上競技女子円盤投のニーナ・ロマシェコワの金メダルを皮切りに、金22、銀30、銅19の計71個のメダルを獲得しました。これは、76個(=金40、銀19、銅17)の米国についで第2位の成績です。 その後、夏季大会の金メダル獲得数ではメルボルン・ローマ・ミュンヘン・モスクワの各大会で1位を獲得。特に、自国開催にして、ソ連軍のアフガニスタン侵攻を理由として西側諸国が参加をボイコットしたモスクワ大会では、全204個の約4割にあたる80個を獲得しています。1984年のロサンゼルス大会はその報復として不参加でしたが、1988年のソウル大会で復帰。ただし、同大会がソ連としては最後の大会参加になりました。 1991年12月25日にソ連が崩壊すると、1992年冬のアルベールヴィル大会と夏のバルセロナ大会に関しては、当初、連邦崩壊後の各国が独自に代表を派遣することが検討されましたが、リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト三国以外については、IOCによる各国の国内五輪委員会の承認が間に合わなかったため、旧ソ連諸国統一チームとして EUN(Équipe Unifiée)が結成され、各国の選手はEUNの一員として参加する形式が採られました。 その後、バルセロナ大会終了直後の1992年8月13日に現在のロシア五輪委が発足。1994年冬のリレハンメル大会以降は、ロシアとしての代表派遣が復活しました。 ロシアにおける組織的なドーピングの問題は、旧ソ連時代からさまざまな噂がありましたが、2016年のリオデジャネイロ大会を前に、..同年7月、世界反ドーピング機関(WADA)が、ロシアが4年間にわたって政府主導でドーピング違反を行っていた証拠が見つかったとする調査チームの報告書を発表。これを受けて、IOC理事3人からなる審査委員会が、国際競技団体が推薦する選手を確認し たうえで、ロシア選手団389人のうち271人が同大会への出場を認められました。 その後、リオ・パラリンピックでは、ロシアの国としての参加は認めないとしたうえで、出場資格を有し、かつIPCの反ドーピング規程に従うことを立証できる個人選手らは、“中立パラリンピック選手(Neutral Paralympic Athletes:NPA)” として、中立的なパラリンピック旗とパラリンピック賛歌の下、出場することが認められました。 この方式は2018年冬の平昌大会でも継承され、以前のドーピング違反や薬物検査歴のないことが確認されたロシアの選手には、個人資格での参加を認めたうえで、ロシア国旗と国歌ではなく五輪旗と五輪賛歌を利用することとされ、ロシアの国章である双頭の鷲やロシアと特定されるあらゆるシンボルの使用が禁止され、ユニホームなどの“ロシア”の表記は“ロシアからの五輪選手”に変更して新たにIOCの承認を受けることとして、“ロシア”の文字だけを大きく表記することも禁止されました。 今回のIOCの決定では、これが少し緩和され、ユニホームに“ロシア・オリンピック委員会”とフル表記することは禁じられたものの、“中立選手”との表示と併記することを条件に“(文字の大きさなどに制約はあるものの)ロシア”の文字を入れることや、今回ご紹介の切手にあるROCのエンブレムの使用が認められています。 ★★ テーマティク切手展、開催中! ★★ ![]() 2021年2月13-21日(土~日) テーマティク研究会は、テーマティクならびにオープン・クラスでの競争展への出品を目指す収集家の集まりで、毎年、全国規模の切手展が開催される際には作品の合評会を行うほか、年に1度、切手展出品のリハーサルないしは活動成果の報告を兼ねて会としての切手展を開催しています。 通常は東京・目白の切手の博物館を会場として開催しておりますが、ことしは、新型コロナウイルス感染防止の観点から、WEB上でコレクションを閲覧できる「オンライン切手展」となりました。ぜひ、こちらをクリックしてご覧ください。 ★ 内藤陽介の最新刊 『日本人に忘れられたガダルカナル島の近現代史』 ★ ![]() 出版社からのコメント 【中国の札束攻勢にソロモン諸島は陥落寸前!】 日本軍の撤退後、悲劇の激戦地は いかなる歴史をたどり、 中国はどのように浸透していったのか 本書のご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
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