2021-01-10 Sun 01:30
きょう(10日)は年に1度のヴォドゥン(ヴードゥー教)の大祭の日です。というわけで、毎年恒例、ヴォドゥンに関する切手の中から、この1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、幼児の首にニシキヘビを巻き付けるヴォドゥンの儀式を取り上げたベナンの切手(1987年発行)です。 西アフリカおよびカリブ海地域のアフリカ系黒人の間で広く信仰されているヴォドゥンは、ベナンの最大民族であるフォン人の言葉で“精霊”を意味する語です。 もともと、ヴォドゥン信仰は、西アフリカにおける太鼓を使った歌舞音曲や動物の生贄、シャーマンによる降霊などの儀式を伴う精霊信仰がその原型だったと考えられており、ベナンのフォン人のみならず、ナイジェリアのヨルバ人、トーゴのミナ人・カブイェ人、トーゴおよびガーナのエウェ人などの間で広く信仰を集めていました。 現在のベナン国家のルーツにあたる旧ダホメ王国は奴隷貿易を行っていましたが、その支配下からカリブ海地域へ送られたフォン人伝来の精霊信仰がカトリックと習合する過程で、ヴォドゥンは“ヴードゥー”に転訛し、この名称が世界的に定着することになりました。 なお、カリブのヴードゥーは、ハイチのマルーン(プランテーションからの逃亡奴隷)の指導者であったフランソワ・マッカンダルが発展させたもので、奴隷の信仰として、白人による弾圧を逃れる必要から、伝統的な精霊信仰に聖母マリアなどのキリスト教の聖人崇敬を組み込んでいるのが一つの特色です。このため、西アフリカの伝統的な精霊信仰とはやや趣を異にしていますが、一般には、両者を一括して “ヴードゥー”と呼ばれることも少なくありません。 さて、フォン人の創世神話によると、世界の始まりの時、精霊の長とされるダンバラ・ウェドゥはヘビに姿を変え、そのとぐろで土を集めて人間に住む場所を与え、造物主を口にくわえてあちこちに運んで世界を創ったとされています。また、世界の陸地は3500段もある巨大なヘビのとぐろの最下段の内側にあり、その外側に海が、さらにその外側は球体が取り囲んでいるというのが、ヴォドゥンの伝統的な宇宙観です。 こうしたこともあって、旧ダホメ王国では人々はヘビ、特に、アフリカニシキヘビは豊穣の象徴として信仰の対象とされ、歴代のダホメ王は重要な政治判断を下す際には、アフリカニシキヘビを用いた占いを行っていました。 かつての奴隷貿易の拠点となった港町のウィダーは、そこから全世界にヴォドゥンが拡散していくことになった出発点として、現在では、ヴォドゥンの聖地とされています。市内のダンベウエ通りにあるダグン寺院は、境内に無数の蛇が飼育されているヘビ寺院として有名です。今回ご紹介の切手では、同寺院での宗教儀礼として、霊験あらたかなニシキヘビを幼児の首に巻き付け、そのご利益で子供の健やかな成長を祈る場面が描かれています。 ★ 内藤陽介の最新刊 『日本人に忘れられたガダルカナル島の近現代史』 ★ 本体1600円+税 出版社からのコメント 【中国の札束攻勢にソロモン諸島は陥落寸前!】 日本軍の撤退後、悲劇の激戦地は いかなる歴史をたどり、 中国はどのように浸透していったのか 本書のご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
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