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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ロスチャイルド家とワイン
2020-11-19 Thu 01:47
 きょう(19日)は11月の第3木曜日。いわずと知れたボジョレ(ボージョレ、ボジョレーとも)・ヌーヴォーの解禁日です。というわけで、へそ曲がりの僕としては「ボジョレだけがワインじゃないよ」ということで、毎年恒例、フランス以外のワイン関連の切手の中から、この1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

      イスラエル・エドモンド・ロスチャイルド(1954)

 これは、1954年11月23日にイスラエルが発行した“エドモン・バンジャマン・ジャム・ド・ロチルド(エドモン・ド・ロートシルト、英語読みでエドモンド・べンジャミン・ジェームス・ド・ロスチャイルドと表記されることも)没後20年”の切手で、エドモンの肖像と彼が英委任統治下のパレスチナでワイン産業に大規模な投資をしたことにちなみ、ブドウが描かれています。

 切手に取り上げられたエドモンは、1845年8月19日、パリ・ロチルド家の祖、ジェームス(ロスチャイルド財閥の祖とされるマイヤーの5男。誕生時の名はヤーコプ)の末子として、パリ郊外のブローニュ=ビヤンクールで生まれました。

 エドモンの父、ジェームスは1792年にフランクフルトで生まれましたが、1811年にパリに移住。ナポレオン戦争で巨額の利益を得たロスチャイルド家は、戦後のウィーン体制下では、一時、フランスの賠償金の調達から排除されるなどの苦杯をなめましたが、1818年、ジェームスはフランス公債を大量に買って一気に売り払うことで圧力をかけ、オーストリア帝国の宰相、クレメンス・フォン・メッテルニヒから高く評価されることになります。そして、1822年にはロスチャイルド一族全員がハプスブルク家より男爵位と、五兄弟の団結を象徴する五本の矢を握るデザインの紋章が与えられました。

 その後、ジェームスは、7月王制の国王、ルイ・フィリップと親密な関係を保つことに成功し、彼のロチルド銀行はフランス国債を独占的に扱うようになったほか、鉄道や水道事業などへの投資で巨額の利益を上げています。

 ところで、ロンドン・ロスチャイルド家の祖、ネイサンの子でジェームスの銀行で働いていたナタニエルは、1853年、メドックのポーイヤック村のワイナリー、シャトー・ブラーヌ=ムートンを競売で落札。これをシャトー・ムートン・ロートシルトと改名し、ロスチャイルド家としてワイン生産を開始します。これが、高級ワインとして知られる“ムートン・ロートシルト”のルーツです。

 一方、ナタニエルの叔父だったジェームスは、1868年8月、ナタニエルの農場に隣接するワイナリーのシャトー・ラフィットとシャトー・カリュアド(後にラフィットと統合)がヴィンテーンベルグ家によって競売に出されると、これを444万フランで落札。ジェームスはその3ヵ月後に亡くなりますが、シャトー・ラフィットは“シャトー・ラフィット・ロートシルト”と改名され、ムートンとともに高級ワインの代名詞となりました。

 ちなみに、ジェームスの事業は、長男のアルフォンスと次男のギュスターヴが継承しましたが、末弟のエドモンは実業にはほとんど関心を示さず、シオニズム運動の熱心な支援者としての活動。その一環として、1882年、パレスチナの地にワイナリーを創設し、南仏の品種を導入して、ユダヤ系入植者によるワイン製造を積極的に支援しています。もっとも、当時のパレスチナ・ワインは、ユダヤ教の儀式に使用される甘口赤ワインが中心で、品質はあまり高くはありませんでしたが…。

 なお、ロスチャイルド家とその事業については、拙著『みんな大好き陰謀論』でも、いわゆる陰謀論を否定する立場から、いろいろご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひお手に取ってご覧いただけると幸いです。


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 11月19日(木) 17:30 InterFM 897の番組、嘉衛門 Presents 「The Road」!に内藤が出演し、“知られざる切手の世界”についてお話します。前編にあたる12日の放送分のradikoでのタイムシフト視聴を含め、詳細はこちらをご覧ください。皆様よろしくお願いします。


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