2020-04-23 Thu 01:41
イランのイスラム革命防衛隊は、きのう(22日)、同国初の軍事衛星“ヌール(光)”を打ち上げ、軌道に乗せることに成功したと発表しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、イランが同国初の国産人工衛星オミードの打ち上げ成功を記念して2009年に発行した切手の1枚で、オミードを搭載したサフィール1ロケットが取り上げられています。 1979年のイラン・イスラム革命後のイランでは、当初、宇宙開発を行うことは全く想定しておらず、“西でも東でもないイスラム共和国”との国是に従って、最高指導者のホメイニも、米ソの宇宙開発競争を皮肉って「彼らは月へでもどこへでも好きなところへ行くが良い」といった主旨の発言をしていました。 ホメイニ死後の1990年6月21日、ソ連のミハイル・ゴルバチョフとイランのハーシェミー・ラフサンジャーニーとの首脳j会談で、イランはソ連と共同で、宇宙ステーション“ミール”に向かう共同有人飛行の実現を目指すことで原則合意しましたが、1991年末にソ連が崩壊したことで、この計画も有耶無耶に終わります。 一方、イランでは、1979年の革命直後から極秘裏に核開発に着手していましたが、1990年代には少量のプルトニウムの抽出に成功。さらに、2002年にイランの核開発問題が表面化し、2003年には国際原子力機関(IAEA)定例理事会で、イランに対する非難決議案が全会一致で採択されました。 こうした状況の下、2003年12月10日、「通信情報技術省の役割と権限に関する法律」が議会を通過。同胞第9条に基づき、翌2004年2月1日、大統領が議長を務める宇宙最高評議会の指示の下、イラン国内の宇宙科学、技術の平和的利用に関する全ての活動を総轄、支援する組織として、イラン宇宙機関(ISA)が創設されました。 2005年10月28日には、ISAはイラン初の人工衛星、スィーナー1号の打ち上げに成功し、独自の人工衛星を保有する43番目の国となります。ちなみに、スィーナー1号はイランが設計しましたが、製造はロシアで行われ、ロシアのプレセツク宇宙基地から、ロシアのコスモス3Mロケットによって打ち上げられています。 さらに、2008年には、北朝鮮や中国から技術協力を受けて開発されたと推測される国産ロケット、サフィール1の軌道投入が行われており、翌2009年2月2日、革命30周年の記念事業として、今回ご紹介の国産衛星“オミード”がサフィール-2によって打ち上げられ、イランは衛星を自国で打ち上げた9番目の国となりました。なお、オミードの打ち上げについて、当時の大統領、アフマディーネジャードは「“一神教と平和と正義」”を世界に広める」ことが目的であると説明。さらに、外務大臣のモッタキーも“純粋な平和目的”のものと説明していますが、そのことを示すため、近隣諸国の上空を通らないように南東のインド洋に向かって打ち上げられるなどの配慮が払われています。 こうした実績を踏まえ、2010年8月、アフマディーネジャードは、2017年までに有人宇宙飛行を実現する意向を表明。2013年1月には、サルを搭乗させた衛星ロケット“ピーシュガーム”の打ち上げ(弾道飛行)に成功しました。 ところで、核爆弾の運搬手段である大陸間弾道ミサイル(ICBM)は大気圏外を飛行する技術が必要で、それゆえ、宇宙開発と核兵器開発は表裏一体の関係にあります。そもそも、“飛翔体”としての広義のミサイルには、いわゆるロケット(狭義には“飛翔体”の推進体を指す)も含まれますが、一般にはロケットの先端部に爆発物を搭載した軍事目的の“飛翔体”をミサイルと呼び、先端部に人工衛星などが搭載されていれば宇宙ロケットと呼ばれており、ロケットとミサイルは本質的に同一の技術です。 現在、イランは新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な状況になっていますが、それでも、軍事衛星の打ち上げを敢行したのは、やはり、米国をはじめ世界各国が自国でのウイルス対応に追われ、イランに対する締め付けが緩んでいる隙に、宇宙技術(≒ミサイル開発)を進めておこうという確固たる意志があってのこととみるべきでしょう。 なお、米国のトランプ大統領は、この記事を書いている時点では、イランの軍事衛星については特に言及していませんが、今月15日に革命防衛隊の艦船がペルシャ湾で米海軍と沿岸警備隊の艦船に異常接近したことを取り上げ、「イランの小型砲艦が海上で米戦艦に嫌がらせをしてくれば、それら全てを撃沈して破壊するよう米海軍に指示した」とツイートし、革命防衛隊の“暴走”を牽制しています。 ★★ 内藤陽介の最新刊 『日韓基本条約』 ★★ 本体2000円+税 出版社からのコメント 混迷する日韓関係、その原点をあらためて読み直す! 丁寧に読むといろいろ々発見があります。 本書のご予約・ご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、本書の目次をご覧いただけるほか、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
コロナがらみで制裁の緩和やIMF融資でアメリカに譲歩するようEUが動いている最中にこんなことされたら、EUとしては面目丸つぶれですね。
もう、CHINAと心中します、という宣言なんでしょうか? |
|
||
管理者だけに閲覧 | ||
|
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
|