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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 成人の日
2020-01-13 Mon 09:50
 きょう(13日)は“成人の日”です。というわけで、“青年”にちなんでこんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      韓国・YMCA50年

 これは、1953年10月28日、韓国が発行した“大韓中央基督教青年会50周年”の記念切手です。“基督教青年会”は、いわゆる YMCA のことで、この切手が、朝鮮戦争の休戦後、韓国で発行された最初の記念切手となりました。

 YMCA(Young Men's Christian Association)は、1844年6月6日、ロンドンでジョージ・ウィリアムズらによって、キリスト者に限らず青年層に対する啓蒙および生活改善事業のための奉仕組織として創立されました。新約聖書「ヨハネによる福音書」第17章21節の「すべての人をひとつにしてください」の理念の下、国家、民族、人種、宗教の隔たりを超えた組織として、活動理念の根幹に超教派のキリスト教精神を据えていますが、ボランティアおよびプログラムの参加者の信仰を規定してはいません。

 1855年にはパリで最初の世界大会が開かれ、世界YMCA同盟(本部はジュネーブ)が結成され、1880年には神田乃武らの提唱により東京でも結成されている。ちなみに、東京YMCAの初代会長に就任した小崎弘道は、Young Men を“青年”と訳し、YMCA の日本名を“基督教青年会”しましたが、これが“青年”という語のルーツとされています。

 朝鮮半島では、大韓帝国時代の1903年、米国から派遣されたジレット、ハルバート、ゲイル(カナダ人)の3人の宣教師の主導により、10月28日、現在のソウルYMCAの前身となる“皇城基督教青年会(漢城基督教青年会とも)”が創設されました。今回ご紹介の切手はここから起算して50周年になるのを記念して発行されたものですが、切手では、組織の名称が“大韓中央基督教青年会”となっており微妙に異なっています。

 さらに、1906年には、漢城に続いて、韓国としては二番目のYMCAとして在日本東京朝鮮基督教青年会(以下、在日YMCA)が設立。特に、在日YMCAの場合は、1905年の第二次日韓協約により日本が大韓帝国の外交権を接収し、それに伴い、大韓帝国の在外公使館が閉鎖されたため、韓国からの留学生の保護、日本語教育、下宿の斡旋、進路相談等、事実上の公使館業務を代行する面もああって、自然と韓国人留学生などが集まる場となり、そこから民族主義に覚醒する者も少なくありませんでした。

 ちなみに、1910年に米国で政治学の博士号を取得した李は、1911年、併合直後の朝鮮に帰国し、ソウルのYMCAの朝鮮人総務に就任しています。この時点での李の帰国の主たる目的は、あくまでも朝鮮におけるキリスト教の宣教であって、必ずしも民族主義的な独立運動を意図していたものではありませんでした。

 ところが、1911年、前年末に朝鮮総督の寺内正毅が朝鮮北西部の平壌、宣川、新義州などを視察した機会をとらえて、独立運動家が寺内の暗殺を企てたとする“105人事件(宣川事件、新民会事件などとも呼ばれる)が摘発され、9月までに約700人の独立運動家が逮捕されました。

 朝鮮総督府はこれまでの経緯も踏まえて米国人宣教師(特に長老派)による煽動を疑い、多くのキリスト教徒を逮捕しましたが、これに対して、米国政府や長老派教会は事件への関与を否定し、逆に朝鮮総督府が自白を得るために逮捕者を拷問したと批判しています。

 後年、李承晩は、105人事件が摘発されると自らも逮捕されることを恐れて、わずか1年半で米国に戻ることにしたと回想していますが、この時点では、朝鮮総督府は李承晩を特に危険人物とは認識しておらず、李が観光目的で下関、京都、東京を経由し、鎌倉市で開催された朝鮮人学生大会にも参加した際も、彼は何らの制約を受けることなく、無事に日本を出国しています。ちなみに、李承晩は1945年9月まで、朝鮮に戻ることはなく、1913年には“日本人”としてハワイのホノルルに居を構えました。

 したがって、李承晩にとっては、ソウルのYMCAで総務を務めたことが日本統治下の朝鮮におけるほとんど唯一の実績であり、今回ご紹介の記念切手の発行に際しても、当然、そうした点が考慮されたと考えられます。

 なお、この辺りの事情を含め、李承晩(政権)とキリスト教の関係については、拙著『日韓基本条約』でも1章を設けてご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひp手に取ってご覧いただけると幸いです。

 * 第11回テーマティク研究会切手展ならびに拙著『日韓基本条約』刊行記念のトークイベントは、無事、盛況のうちに終了いたしました。ご参加いただいた皆様ならびに開催の労を取っていただいたスタッフの方々には、この場をお借りして、改めてお礼申し上げます。

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