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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 スエズ動乱から半世紀
2006-10-29 Sun 01:02
 今日(10月29日)は、スエズ動乱ともいわれる第2次中東戦争の勃発から50周年にあたります。ということで、こんなものを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

スエズ国有化スローガン

 1956年7月26日のスエズ運河国有化宣言(詳しくは、こちらをご覧ください)に激怒した英仏は、エジプトによるチラン海峡の封鎖で経済的なダメージを受けていたイスラエルと同調し、武力による運河国有化の阻止を計画します。その筋書きは、①イスラエル軍が国境を越えてシナイ半島に侵攻、②それに対して英仏が“スエズ運河の安全な航行を確保するため”として、兵力引き離しのためにエジプト・イスラエル両軍をシナイ半島から撤退するように通告、③エジプトがこれを拒否したら、“制裁”のために英仏軍が介入し、エジプト軍をスエズ運河以西へ追い払った上で、平和維持としてスエズ運河地帯に駐留する、というものでした。

 このプランに従い、10月29日、イスラエル軍がシナイ半島侵攻作戦を開始し、第2次中東戦争が勃発。筋書き通りに、エジプトが英仏の通告を拒否したため、英仏軍が軍事侵攻を開始し、イギリス軍の落下傘部隊はポートサイド(スエズ運河の地中海川の出口)を急襲します。

 今回ご紹介しているカバー(封筒)は、そうした最中の1956年11月21日にカイロからアメリカ宛に差し出されたもので「スエズ運河はエジプトの不可分の領土である」との内容のスローガンが入った消印が押されています。英仏の理不尽な圧力に屈しないというエジプトの姿勢を、広く国際社会に訴えようとする意図が強烈に伝わってきます。

 結局、英仏によるスエズ侵攻作戦は、米ソを含む国際社会の厳しい非難を浴び、英仏両国は12月2日には作戦を中止せざるを得なくなりました。これにより、中東アラブ世界における英仏の権威は地に落ち、代わって、アラブ世界も本格的に東西冷戦の枠組に巻き込まれていくことになります。

 なお、スエズ動乱をめぐる切手とプロパガンダに関しては、拙著『これが戦争だ!』(ちくま新書)でも、それなりにスペースを割いて説明しています。よろしかったら、是非一度、ご覧いただけると幸いです。

*11月3日(金・祝)16:00より、東京・池袋で開催の<JAPEX>会場内にて『満洲切手』刊行記念のトークを行います。よろしかったら、是非、遊びに来てください。(『満洲切手』については、こちらもご覧ください)
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