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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 砂糖の日
2019-03-10 Sun 10:31
 きょう(10日)は、3と10の語呂合わせて“砂糖の日”です。というわけで、きょうはこんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      キューバ・1000万トン計画

 これは、1970年にキューバで発行された“(砂糖増産)1000万トン計画”のキャンペーン切手で、地球と“国際旅団”の赤旗を背に、サトウキビの収穫に用いるマチェーテを手にした男たちが描かれています。

 キューバの主要産業である砂糖の生産量は、革命直前の1958年に580万トンだった砂糖の生産量は、革命後の混乱に加え、砂糖モノカルチャーを貧困と従属の元凶として、そこからの脱却を掲げる革命政府の方針もあって、1962年には480万トン、1963年には380万トンにまで落ち込みました。革命後のキューバはソ連とバーター貿易を行っていましたが、砂糖の生産が落ち込んだことで、ソ連への砂糖の輸出は滞り、債務も累積し始めます。

 このため、ソ連は、カストロに対して、砂糖モノカルチャーを敵視するのではなく、経済建設の幻視として砂糖の輸出を最大限に活用すべきではないかと提案し、資金の供与と砂糖の長期引き受けを約束します。ソ連が提示した砂糖の購入価格は(1ポンドあたり)6.11セントの固定相場で、これは、1963年の国際市場価格の8.4セントに比べると安いものの、低落傾向が続く中で(ちなみに、その後の相場の暴落で、1967年には1.99セントにまで市場価格が落ち込んでいます)は決して悪い条件ではありませんでした。

 しかし、砂糖モノカルチャー経済への復帰は、米国に代わってソ連を新たな“宗主国”として選択することに他ならないため、キューバとしては、革命の大義に照らして容認しがたいものでした。

 そこで、両者の折衷案として、砂糖の増産を機械化によって実現し、それを軸に工業化を進めるという方針が採択されました。
これが、“1000万トン計画”の基本的な考え方です。

 “1000万トン計画”は1965年から開始され、国民に対しては“大攻勢”が命じられます。

 “大攻勢”では、国民の“革命意識”に訴えて職場や学校で砂糖キビ収穫隊が組織され、マチェーテ片手に人海戦術での刈取作業に従事させられました。しかし、動員された隊員たちに対する教育は不十分で、彼らがやみくもにマチェーテを当てることでサトウキビの苗を根こそぎ切り取ってダメにする(本来は、植えてから四年間の収穫が可能なため、新しい芽が出るように刈り取らなければなりません)ケースが多発しました。また、杜撰な生産計画のため、隊員たちがサトウキビを刈り取ったものの、運搬用のトラックが来ないためにサトウキビがそのまま放置されて醗酵してしまい、その間、隊員たちは無為に遊んでいるという状況が至る所で見られました。

 さらに、収穫隊に労働力を取られたことで工場に残った労働者は残業に加え、休日出勤もしなければノルマをこなせなくなりましたが、本来、労働者の権利を擁護すべきキューバ労働者連合は時間外手当を返上。これを受けて、ノルマ超過分に対する報奨金も廃止されるとともに、同一労働同一賃金を規定した新賃金体系が導入されています。これは、労働の成果に関わらず職種ごとに同じ賃金を支給するという、社会主義的な悪平等政策の典型でしたから、もともと決して高くはなかった国民の労働意欲がさらに減退するのは避けられず、砂糖以外の生活物資の生産性は大幅に低下し、深刻なモノ不足の下、一般国民は粗悪な工業製品さえなかなか入手できなくなりました。

 結局、1000万トン計画は、飢餓こそ発生しなかったものの、中国で行われた“大躍進”の失敗をそのままなぞったような格好となり、1970年度の砂糖生産は850万トンで、惨憺たる失敗に終わりました。

 なお、このあたりの事情については、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』でもご説明しておりますので、機会がありましたら、お手にとってご覧いただけると幸いです。


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 【出版元より】
 盟友フィデル・カストロのバティスタ政権下での登場の背景から、“エルネスト時代”の運命的な出会い、モーターサイクル・ダイアリーズの旅、カストロとの劇的な邂逅、キューバ革命の詳細と広島訪問を含めたゲバラの外遊、国連での伝説的な演説、最期までを郵便資料でたどる。冷戦期、世界各国でのゲバラ関連郵便資料を駆使することで、今まで知られて来なかったゲバラの全貌を明らかする。

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