2018-09-13 Thu 09:21
今上陛下は、きのう(12日)、皇居の水田で恒例の稲刈りをされました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1937年12月11日に発行された“稲刈り”の1銭切手です。 1937年、それまで抽象的な文様が主流だった普通切手の図案が大幅に改正され、「世界に冠たる神国・日本」をテーマに、日本を代表する風景や文化遺産、軍人・忠臣などを題材にした絵画図案の切手が発行されるようになりました。いわゆる昭和切手です。 昭和切手のうち、今回ご紹介の1銭切手は、食糧増産を呼びかける宣伝の意味も込めて、“稲刈り”が図案として採用されましたが、その農夫の手つきについては異論が続出します。 すなわち、稲を鎌で刈る際には茎は立てたまま稲を下から持って刃を入れて刈り、刈穂は横に置くのが一般的な作業手順であって(たとえば、下の画像の韓国切手がその典型例です)、切手のように、茎を寝かせて上から刃を入れるということはしません。むしろ、1銭切手の手つきは、左手で茎をまとめ、鎌をまわすようにして刈りとる麦刈りのスタイルに似ています。 それもそのはずで、1銭切手の原画が制作されたのは1937年6月のことで、この時点では、逓信省の担当デザイナーだった木村勝は実際の稲刈りの風景を見ながら作業を行いことができませんでした。このため、便宜的に、栃木県で麦刈りの風景を取材するとともに、東京の逓信博物館でアルバイトを雇って稲刈りの真似をさせて原画を制作したのですが、農業体験のなかった木村には稲刈りと麦刈りの差が理解できなかったものと思われます。 さて、皇居での稲作は、農家の苦労を分かち合うために昭和天皇が始め、その後、陛下が引き継がれたもので、収穫後の稲は、皇室の行事や伊勢神宮での神事などに使われます。今上陛下が天皇として行う稲刈りは、来年4月の御退位を控え、今回が最後で、来年移行の皇居での稲作は4月30日以前の作業は今上陛下が行い、その後は即位後の皇太子殿下に引き継がれるそうです。 ★★★ 近刊予告! ★★★ えにし書房より、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』が近日刊行予定です! 詳細につきましては、今後、このブログでも随時ご案内して参りますので、よろしくお願いします。 (画像は書影のイメージです。刊行時には若干の変更の可能性があります) ★★ 内藤陽介の最新刊 『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』 ★★ 本体2500円+税 【出版元より】 中東100 年の混迷を読み解く! 世界遺産、エルサレムの“岩のドーム”に関連した郵便資料分析という独自の視点から、複雑な情勢をわかりやすく解説。郵便学者による待望の通史! 本書のご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
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