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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 本日、トークやります。
2018-07-21 Sat 00:35
 昨日(20日)から、東京・錦糸町のすみだ産業会館で全日本切手展2018(以下、全日展)がスタートしました。今回は、チェコスロヴァキア独立100周年ということで、会場では“チェコ切手展”も併催しており、本日(21日)は僕も14:30から「アウシュヴィッツとチェコを往来した郵便」と題するトークイベントをやります。というわけで、きょうはこんなモノをご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

      ヘジュマヌーヴ・ムニェステツからアウシュヴィッツ宛

 これは、1942年3月17日、ヘジュマヌーヴ・ムニェステツからアウシュヴィッツの収容者宛に差し出されたものの、収容所側の通信制限を理由に差出人に返送された郵便物です。

 第二次大戦勃発前年の1938年9月29-30日に行われたミュンヘン会談の結果、対独宥和政策を取る英国のネヴィル・チェンバレン首相、フランスのエドゥアール・ダラディエ首相は、「ズデーテンラントは我々の最後の領土的要求であり、チェコスロヴァキアの独立を侵害するつもりはない」と主張するヒトラーに譲歩し、ズデーテン地方のドイツ編入を容認。同年10月1日には、ズデーテンラントでのドイツによる軍政が施行されました。その後、ヒトラーは前言を翻し、1939年3月、チェコスロヴァキア国家を解体。ドイツはチェコ地域の主要部を併合して、ボヘミアとモラビアの主要部分にベーメン・メーレン保護領(ボヘミア・モラビアのドイツ語読み)を設置します。今回ご紹介の郵便物の差出地であるヘジュマヌーヴ・ムニェステツは、現在のチェコの領域にありますが、上記のような事情でベーメン・メーレン保護領に編入されたため、切手も同保護領のモノが貼られています。

 さて、1940年、ポーランド南部に開設されたアウシュヴィッツ収容所は、もともとは、ポーランド人の政治犯・捕虜を収容するための施設でした。ところが、1941年6月の独ソ戦勃発を経て、1942年1月のヴァンゼー会議で「ユダヤ人問題の最終解決」が決定されると、ドイツ勢力圏下の欧州各地からユダヤ系の人々がアウシュヴィッツに移送されてくるようになり、アウシュヴィッツとベーメン・メーレン保護領との間でも郵便物の往来が始まります。

 アウシュヴィッツの収容者宛の通信に関しては、差出地のいかんにかかわらず、収容者の名前・誕生日・収容者番号・収容棟番号を記して、アウシュヴィッツ郵便局気付で送られました。そして、収用所に到着した郵便物は、まず、収容所当局によって名宛人が収容所にいるか否か、1ヶ月に2通という受取可能な通数の制限内に収まっているか否かをチェックしたうえで、内容の検閲を受け、収容者に渡されるという段取りになっていました。

 このため、収容者の死亡や別の収容所への移送により名宛人が不在となった場合や、受け取り可能な通数を超えた場合には、そのことが明らかになった時点で、事情説明の印を押して差出人に返戻されています。今回ご紹介の郵便物では、下から、名宛人がすでに1ヶ月2通までの制限を超える郵便物を受け取っていたことを示す“schon post erhalten(郵便物受領済)”、郵便検閲を受けたことを示す“Postzensurstelle/ K.L. Auschwitz/ geprüft:…………..(郵便検閲/アウシュヴィッツ収容所/検閲担当者…)”の3行印、“zurück/ Annahme verweigert(差出人戻/受取拒否)”の2行印が押されています。

 今日のトークイベントでは、第二次大戦中のチェコスロヴァキアについての基本的な状況や、アウシュヴィッツからベーメン・メーレン保護領宛の郵便物、テレジーン(ドイツ語名テレジエンシュタット)収容所からアウシュヴィッツに移送された収容者に関して行われた郵便物の偽装工作などについてもお話しするほか、時間に余裕があれば、今年5月、エルサレムでの世界切手展に出品したPostal History of Auschwitz 1939-1945 (審査員出品として会場に展示しています)についても、簡単に解説したいと思っています。

 つきましては、ぜひ、14:30から全日展会場の8階イベントスペースでのトークにご参加ください。また、アウシュヴィッツとその郵便物の概要につきましては、拙著『アウシュヴィッツの手紙』も併せてご覧いただけると幸いです。
 
 
★★★ 全日本切手展のご案内  ★★★ 

 7月20-22日(金-日) 東京・錦糸町のすみだ産業会館で全日本切手展(全日展)ならびにチェコ切手展が開催されます。主催団体の一つである全日本郵趣連合のサイトのほか、全日本切手展のフェイスブック・サイト(どなたでもご覧になれます)にて、随時、情報をアップしていきますので、よろしくお願いいたします。

      全日展2018ポスター

 *画像は実行委員会が制作したポスターです。クリックで拡大してご覧ください。


★★★ 近刊予告! ★★★

 えにし書房より、拙著『チェ・ゲバラとキューバ革命』が近日刊行予定です!
 詳細につきましては、今後、このブログでも随時ご案内して参りますので、よろしくお願いします。

      ゲバラ本・仮書影

(画像は書影のイメージです。刊行時には若干の変更の可能性があります) 
 

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