2017-10-31 Tue 08:49
1517年10月31日にマルティン・ルターがヴィッテンベルク城教会の扉に『95ヶ条の論題』を張り出し、いわゆる宗教改革が始まってから、きょうでちょうど500年です。というわけで、ブラジルからの帰国途中の空港ラウンジで記事を書いていることでもありますし、こんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
![]() これは、ことし(2017年)4月13日、ブラジルがドイツと共同発行した“宗教改革500年”の記念切手で、ルターの肖像と、新約聖書「ヨハネによる福音書」の「はじめに言葉ありき(No princípio era a palavra)」の文言が記されています。なお、今回ご紹介の画像は、現地時間30日までの在伯中、切手展会場の郵便局で入手したものをスマホで撮影したものですので、帰国後、きちんとスキャンしなおして差し替えたいと思います。 さて、ブラジルは世界最大のカトリック人口を抱える国ですが、近年、カトリックの人口が急減し、プロテスタント、特に福音派(ポルトガル語ではエヴァンジェリコ)が急速に勢力を伸ばしています。 すなわち、2016年12月に公表されたブラジルの有力紙『ダータフォーリャ』が発表した調査結果(16歳以上のブラジル人2500人以上を対象)によると、調査時点でのカトリック人口の割合は50%で、前回(2年前)の60%から10ポイント(総人口との比率で考えると900万人)という急激な減少を示しています。ちなみに、1994年の同様の調査では、人口の75%がカトリックと回答していましたので、カトリックにとって、信徒の急減は深刻な問題と言ってよさそうです。 これに対して、無宗教と答えた人の割合は、前回の6%から14%と倍増以上で、プロテスタントの割合は29%にまで拡大しています。 もともと、ブラジルにおけるプロテスタントはドイツ系の移民が持ち込んだもので(それゆえ、今回ご紹介の切手もドイツとの共同発行となったわけですが)、それゆえ、伝統的なルター派教会はリオ・グランデ・ド・スル州などドイツ系移民の多い地域を中心に建設されていました。ここに、20世紀初頭、プロテスタントのうちのメソジスト、ホーリネス教会のなかから、米国で始まった聖霊運動のペンテコステが流入し、プロテスタントにおいて大きな影響力を持つようになります。 そうした土壌の下、近年、やはり米国で勢力を急速に拡大している福音派(ブラジルでは“エヴァンジェリコ”と呼ばれる)がブラジルにも進出し、都市部に浸透していったというのがおおよその傾向です。ちなみに、地域ごとのプロテスタントの人口比ですが、最も多いのがサンパウロやリオデジャネイロ、ミナスジェライスのある南東部で43%、北東部で27%、その他の地域は15%程度となっています。 ブラジル人のカトリック離れについては、さまざまな原因が指摘されていますが、その一つとして、ポルトガル植民地時代以来、カトリックが強い権威・権力を有してきた歴史に対する反発や、カトリック教会が信徒たちの要求に対応しきれなくなっているという事情などがあるようです。たとえば、カトリックの神父の説教が定型的すぎて現実の出来事に具体的に対応してくれないのに対して、プロテスタント、特に福音派は米国仕込みの宣教戦略が巧みで説教が分かりやすく、礼拝(ミサ)も情熱的で、病気を治したり奇跡を強調したりするところで支持を拡大しているとの指摘もあります。 ちなみに、ブラジルの福音派の間では、ムスリム同様、禁酒を(事実上の)戒律とされており、カーニヴァル等の祝祭も、「Não agrada Deus(神が喜ばないから)」という理由で忌避される傾向があるのだとか。 まぁ、信仰は人それぞれなので、僕のような非lクリスチャンがとやかく言うべきことではないのですが、お酒を飲みながら、女性と一緒に夜通しどんちゃん騒ぎをやるという、昔ながらのカトリックのブラジル人の方が、ずっと親近感がわくのですがね。 なお、ブラジルにおける宗教事情の一端については、拙著『リオデジャネイロ歴史紀行』でもご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひお手に取ってご覧いただけると幸いです。 ★★★ トークイベントのご案内 ★★★ 11月4日(土) 12:30より、東京・浅草で開催の全国切手展<JAPEX>会場内で、拙著『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』刊行記念のトークイベントを予定しております。よろしかったら、ぜひ遊びに来てください。なお、詳細は主催者HPをご覧いただけると幸いです。 ★★★ 世界切手展<WSC Israel 2018>作品募集中! ★★★ 明年(2018年)5月27日から31日まで、エルサレムの国際会議場でFIP(国際郵趣連盟)認定の世界切手展<WSC Israel 2018>が開催される予定です。同展の日本コミッショナーは、不詳・内藤がお引き受けすることになりました。 現在、出品作品を11月10日(必着)で募集しておりますので、ご興味がおありの方は、ぜひ、こちらをご覧ください。ふるってのご応募を、待ちしております。 ★★ 内藤陽介の最新刊 『パレスチナ現代史 岩のドームの郵便学』 ★★ ![]() 【出版元より】 中東100 年の混迷を読み解く! 世界遺産、エルサレムの“岩のドーム”に関連した郵便資料分析という独自の視点から、複雑な情勢をわかりやすく解説。郵便学者による待望の通史! 本書のご注文は版元ドットコムへ。同サイトでは、アマゾン他、各ネット書店での注文ページにリンクしています。また、主要書店の店頭在庫も確認できます。 |
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