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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ヴィクトリア女王即位180年
2017-06-20 Tue 11:59
 1837年6月20日に英国のヴィクトリア女王が即位してから、今日でちょうど180年です。というわけで、今日はこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      カナダ・ジュビリー(1897)

 これは、1897年にカナダが発行したヴィクトリア女王即位60周年の記念切手で、即位当時(1837年)の肖像と切手発行時(1897年)の肖像が並べて取り上げられています。

 ヴィクトリア女王は、英国王ジョージ3世の第4王子であるケント公エドワードの一人娘として、1819年5月24日に生まれました。出生時の王位継承順位は第5位でしたが、1820年1月23日、生後8ヶ月にして父親のケント公が薨去し、さらに、同29日には国王ジョージ3世が崩御します。これを受けて、伯父の皇太子ジョージがジョージ4世として即位します。ジョージ4世は子のないまま、1830年6月26日、崩御。すでに、国王の次弟ヨーク公は1827年に亡くなっており、三弟クラレンス公ウィリアムがウィリアム4世として即位しましたが、この時点でウィリアム4世はすでに65歳の高齢で子がなく、ヴィクトリアは議会から“暫定王位継承者”に認定されます。

 その後、1837年5月24日にヴィクトリアは18歳となり成人。その直後の同年6月20日、ウィリアム4世が崩御したことで、ヴィクトリアが18歳にして英国女王として即位することになりました。

 今回ご紹介の切手の左側の肖像画は、女王の即位直後の1837年7月、英国議会の開会を宣言するため、女王として初めて公の場に姿を現した時の彼女を描いたもので、ジュネーヴ出身のアルフレッド・エドワード・シャロンが女王本人の依頼を受けて制作しました。ちなみに、ペニー・ブラックの元になった“ワイオンのメダル”は、1837年11月9日の女王のロンドン市庁舎訪問を記念して作られたものですから、肖像としてはシャロンの制作したものの方が、即位後より早い時期のものということになります。ちなみに、女王は完成した肖像画を、母親のマリー・ルイーゼ・ヴィクトリア・フォン・ザクセン=コーブルク=ザールフェルトにプレゼントするつもりだったそうです。

 シャロンの肖像画は、1838年6月28日、ロイヤル・アカデミーの彫刻家、サミュエル・カズンズによって銅版画として刊行され、“女王即位の肖像”として広く知られるようになりました。

 この肖像を採用した最初の切手は、1851年4月9日に英領カナダ連合で発行された緑色の71/2ペンスおよび黒色の12ペンス切手で、印刷はニューヨークで行われています。その後、シャロンの肖像画をもとにした切手は、1853年にはノヴァ・スコティア(カナダ東部の州)で、1855年にはニュージーランドタスマニア(オーストリア南部の州)で、1859年にはバハマ(カリブ海)ナタール(現南アフリカ共和国北西部の州)で、1860年にはニューブランズウィック(カナダ東部の州)とクイーンズランド(オーストラリア北東部の州)、グレナダ(カリブ海)で、そして、1870年にはプリンス・エドワード島(カナダ東海岸の島)でも発行されています。

 もともとのシャロンの肖像画は女王の全身像を描いたものでしたが、切手では小さな印面に収まるよう、顔の部分を中心にトリミングされています。切手のデザインが“シャロン・ヘッド”と呼ばれているのはこのためです。なお、多くの植民地では、切手のデザインは女王のネックレスから上の部分を中心に図案が構成されていますが、ネックレスよりも上の部分だけのデザインのものや、ニュージーランドのように胸から上の部分を大きくデザインしたものもあります。

 なお、拙著『英国郵便史 ペニー・ブラック物語』では、1837年のヴィクトリア女王の肖像を取り上げた切手なども多数ご紹介しております。機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


 ★★★ NHKラジオ第1放送 “切手でひも解く世界の歴史” ★★★ 

 6月15日(木)に放送の「切手でひも解く世界の歴史」の第4回目は無事に終了しました。お聞きいただいた皆様、ありがとうございました。次回の放送は6月29日(木)16:05~の予定ですので、引き続き、よろしくお願いいたします。 

 なお、15日放送分につきましては、放送から1週間、こちらの“聴き逃し”サービスでお聴きいただけますので、ぜひご利用ください。

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 【出版元より】
 「韓国/北朝鮮」の出発点を正しく知る!
 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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