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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 二条城ご難
2017-04-19 Wed 08:48
 きのう(18日)、京都市中京区の世界遺産・二条城で、国宝の二の丸御殿の廊下や庭園など、少なくとも46ヶ所で茶色の粉のようなものがまかれているのが見つかり、京都府警中京署が文化財保護法違反容疑で捜査しているそうです。というわけで、今日は二条城の切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      二条城

 これは、1987年11月18日に発行された“世界歴史都市会議”の記念切手で、二条城・二の丸御殿の車寄と遠侍の屋根を中心に麻賀進の撮影した写真が取り上げられています。

 切手の題材となった世界歴史都市会議は、地方自治体の国際交流の一環として、1000年以上の歴史と50万以上の都市を中心に、京都市と歴史的類似性のある都市や姉妹・友好都市など世界各国の35都市 の市長を招いて開催したのがはじまりで、その第1回会議は1987年11月18-21日の4日間、京都市の国立京都国際会館で開催されました。

 第1回会議のテーマは「21世紀における歴史都市―伝統と創生―」で、①都市計画論、②文化遺産論、③都市産業論の3セッションに分かれ、意見交換が行われるとともに、「京都宣言」 が採択されました。

 また、会議では、同会議の継続開催のために、第1回会議に参加した26都市を会員として世界歴史都市会議協議会が設立され(事務局は京都に置かれ、京都市長が協議会会長を務めた)、フィレンツェでの第2回会議、バルセロナでの第3回会議を経て、1994年4月に第4回世界歴史都市会議が再び京都で開催されたのを契機に、1987年の京都宣言の目的を達成するために、従来の協議会を発展的に解消し、世界歴史都市連盟が設立され、現在にいたっています。

 歴史的にみると“二条城”と呼ばれた城は複数ありますが、切手に取り上げられているのは、関ヶ原の戦いで勝利を収めた徳川家康が上洛時の宿所として築城したもので、1603年に落成しました。その後、天守や本丸の殿舎などは焼失し、現在は東大手門や北大手門などの門と、諸櫓の城郭建築のほか、二の丸御殿、御殿台所などが残っています。

 切手に取り上げられた二の丸御殿は書院造の最も豪華な実例で、車寄は現代家屋でいう玄関に相当し、遠侍は入城した参賀の諸大名の控えの間にあてられていました。また、二の丸御殿の大広間は、1867年、徳川慶喜が大政奉還を発表した場所としても知られています。

 なお、今回ご紹介の切手が発行された時点で、城と名のつく建造物で国宝に指定されていたのは姫路城松本城犬山城 、彦根城 、二条城の5件ありましたが、今回の切手に二条城が登場したことで、そのすべてが切手として出揃いました。その後、2015年に松江城が国宝に(再)指定されたことを受け、現在では、天守が国宝に指定されている姫路城、彦根城、犬山城、松本城、松江城が“国宝5城”(二条城は含まれない)と呼ばれています。ちなみに、松江城も2001年のふるさと切手に取り上げられています。また、二条城の建築ではありませんが、その内部の装飾に関しては、狩野探幽の「松」の障壁画を取り上げた額面20円の普通切手が1972年に発行されています。

 なお、この切手を含む昭和末期の記念切手については、拙著『昭和終焉の時代』で詳しく解説しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 


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 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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