2017-03-23 Thu 12:51
ご報告が遅くなりましたが、『本のメルマガ』637号が先月25日に配信となりました。僕の連載「岩のドームの郵便学」では、今回は、第1次インティファーダの時期のイスラム主義者たちの活動について取り上げました。その記事の中から、この1点です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1988年5月13日、イランが発行した第1次インティファーダでの殉教者を讃える切手です。 1987年12月に第1次インティファーダが発生すると、パレスチナのイスラム主義勢力もこれに加わり、武装闘争を展開します。 1970年代以前のパレスチナでは、反イスラエルの武装闘争は世俗主義を掲げるPLO系の組織が中心で、ムスリム同胞団は主として救貧や医療などの社会活動を担い、武装闘争には慎重でした。 これに対して、ガザ出身のファトヒー・シカーキー(シャカーキーとも)は1979年のイラン・イスラム革命に刺激を受け、『ホメイニー:イスラム的かつ新しい解決策』を刊行。PLOなど世俗主義的な解放運動はイスラムを欠き、ムスリム同胞団などイスラム復興運動はパレスチナを欠いているとの現状認識の下、イスラムに立脚したパレスチナ解放こそが重要であると主張しました。これは、ホメイニーのイスラム革命が“イスラムと闘争の結合”の結果であるとの理解によるもので、シカーキーはイランの樹立した“イスラム共和国”と類似の体制をパレスチナに樹立することを主張していたわけではありませんが、イスラム革命の精神そのものを大いに称揚していました。 さらに、1980年、シカーキーは、イスラエルに対する武装闘争を“ジハード”と位置付け、パレスチナ全土の解放を目標とする少数精鋭主義の“パレスチナ・イスラム・ジハード運動(以下、ジハード運動)”を組織。その軍事部門である“クドゥス旅団(クドゥスはエルサレムのアラビア語名)”は、イランやシリアの支援を受け、レバノンのヒズブッラー(ヒズボラ)とも連携して、1986-87年にイスラエルに対する断続的な襲撃事件を起こしました。ちなみに、ジハード運動は自分たちに対するイスラエルの報復攻撃が第一次インティファーダの契機となったと主張しています。 今回ご紹介の切手は、イランがジハード運動支援の姿勢を明らかにするために5種連刷形式で発行したもので、左側の4種が第一次インティファーダで“殉教”したジハード運動の活動家の肖像を、右端の1種が石礫を投げる人々を取り上げていますが、パレスチナの地図とイスラムの聖地・岩のドームを背景に、ダヴィデの星の形をした鉄条網が破れているというデザインは共通です。 なお、第1次インティファーダの発生を受けて、ムスリム同胞団パレスチナ支部も従来の方針を転換し、1987年12月14日、アフマド・ヤースィーンを中心に行動組織の“イスラム抵抗運動”を結成。これが、現在、ガザ地区を実効支配しているハマースの原点です。ちなみに、イスラム抵抗運動は、アラビア語ではحركة المقاومة الاسلامية となりますが、ハマースというのはそのアラビア文字の頭文字を取った略称で、ハマースという単語自体は、アラビア語で“激情”を意味しています。 ★★★ ブラジル大使館推薦! 内藤陽介の『リオデジャネイロ歴史紀行』 ★★★ 2700円+税 【出版元より】 オリンピック開催地の意外な深さをじっくり紹介 リオデジャネイロの複雑な歴史や街並みを、切手や葉書、写真等でわかりやすく解説。 美しい景色とウンチク満載の異色の歴史紀行! 発売元の特設サイトはこちらです。 ★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインよろしくポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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