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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 歯舞に“デレヴィヤンコ島”
2017-02-12 Sun 15:40
 ロシアのメドヴェージェフ首相が千島列島で名前がついていなかった5つの島に対して、ロシア名をつける指示書に署名し、そのうちの一つで、ロシアが不法占拠している日本領・歯舞群島の秋勇留島付近の島が“デレヴィヤンコ島”と命名されたそうです。というわけで、今日はこんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      ロシア・戦勝70年(デレヴィヤンコ)

 これは、2015年にロシアが発行した“第二次大戦終結70周年”の記念切手で、今回の島名の由来となったクズマ・デレヴィヤンコが、1945年9月2日、ミズーリ号上で日本降伏文書に調印する場面が描かれています。

 デレヴィヤンコは、1904年11月14日、ロシア帝国支配下のコセニヴカ(現・ウクライナ領)で生まれました。1922年、赤軍に兵士として参加し、1927年にソ連共産党に入党。独ソ戦が勃発するとドイツとの戦闘で軍功を上げて将官にまで栄進し、1945年、赤軍を指揮してウィーンに入城しました。

 ソ連の対日参戦後は、極東米軍との間のソ連軍事使節団連絡将校としてマニラに派遣され、日本降伏後はソ連軍総司令官代表に任命され、9月2日の降伏文書調印にはソ連代表としてサインし、そのまま、ソ連の対日軍事使節団団長に任じられました。翌1946年、対日理事会(連合国日本管理委員会)が発足すると、同理事会のソ連代表に就任。占領下の農地改革では、1945年9月2日現在すべての小作地・不在地主所有地を国家が強制収用するという案を提出するなど、左派色の強い占領改革案を提案しました。

 デレヴィヤンコといえば、マッカーサーに対して、ソ連による北海道占領を繰り返し要求していたことでも知られています。マッカーサーの専用車に同乗中、この問題を持ち出したデレヴィヤンコに対して、マッカーサーは「ここで停めなさい。中将は降りて一人で歩いて帰るそうだから」と運転者に命じ、デレヴィヤンコは黙ってしまったというエピソードは有名です。その後も、デレヴィヤンコは日を改めてGHQのオフィスでマッカーサーに北海道占領を要求していますが、この時は、さすがにマッカーサーも「日本にソ連兵が一人でも現れたら、ソ連代表団をみんな刑務所にぶちこむぞ!その時はあんたが一番だ!」と怒鳴りつけたのだとか。

 また、東京裁判で死刑判決を受けた“A級戦犯”7名の処刑に際しては、当初、マッカーサー自身は遺骨を遺族に渡す意向だったと言われていますが、デレヴィヤンコが「遺骨を保管すれば軍国主義が復活する」と強硬に反対。このため、遺骨は粉砕して東京湾に撒かれることになりました。ただし、その散骨前に、 弁護士の三文字正平と久保山興禅寺の住職・市川伊雄が火葬場の飛田場長と共に遺骨の遺棄された場所に忍び込んで遺骨の一部を密かに持ち出し、それらは、1960年、愛知県三ケ根山に移されて“殉国七士廟”が建てられています。

 結局、デレヴィヤンコは、1950年5月27日まで対日理事会のソ連代表を務め(ただし、この間、1947年8月7日から1948年8月31日まではアレクセイ・パヴロヴィチ・キスレンコが職務を代行)てソ連に帰国。1954年12月30日に亡くなりました。

 今回、ロシアが歯舞群島の島の一つをデレヴィヤンコ島と命名したのも、あらためて、歯舞群島に対する彼らの時候支配を強調する意図があったからなのですが、それにしても、デレヴィヤンコが日本でやってきたことを思い起こすと、このネーミング、日本に対する嫌がらせ以外の何物にも思えませんな。


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