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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 日本版“ウォリアー・モンク”
2017-02-04 Sat 08:44
 きのう・きょう(3・4日)の日程で、米国のジェームズ・マティス国防長官が来日中です。先月21日に発足したばかりのトランプ政権の閣僚の訪日は初めてということなので、国防長官のあだ名の一つ”ウォリアー・モンク(Warrior Monk)”にちなんで、きょうはこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      ふるさと切手(京都)・義経と弁慶

 これは、1995年4月3日に発行された“ふるさと切手(京都府)”の「牛若丸と弁慶」で、京・五条大橋での牛若丸(源義経)に襲い掛かる荒法師の武蔵坊弁慶が描かれています。

 マティス国防長官のあだ名としては、“マッド・ドッグ(Mad Dog)”とウォリアー・モンクが知られています。このうち、マッド・ドッグは、日本のメディア等では“狂犬”と直訳して紹介されることが多いのですが、米国では、文字通りの意味というよりも、いい意味での“恐れを知らぬ荒くれ者”というニュアンスが強いのだそうです。

 一方、ウォリアー・モンクは、長官に結婚歴がなく、子供もいないことから、“独身で禁欲的な戦略家”のイメージでつけられたもので、日本語としては“戦う修道士”と訳されることが多いようです。ただ、歴史用語としては、比叡山などの僧兵も“(Buddhist) Warrior Monks”と訳されますので、今回は、歴史上、最も有名な僧兵として、弁慶の切手をご紹介したという次第です。

 歴史上の人物としての弁慶については、ほとんど資料が残っていないのですが、芝居や講談などでは、元は比叡山の僧で、武術を好み、1000本の刀を集めるとの願をかけたものの、その1000本目を狙って五条大橋で義経に挑んだものの敗れたのを機に、義経に仕えるようになったとされています。

 今回ご紹介の切手の原画は、1940年に京都で生まれた日本画家・扇面絵師の水島征夫が制作したものです。なお、弁慶関連の切手としては、ほかに、歌舞伎の「勧進帳」を題材としたモノもあるのですが、「勧進帳」での弁慶は山伏姿ですので、“Warrior Monk”を直訳して“僧兵”ということであれば、やはり僧形の弁慶でないと格好がつきますまい。

 ところで、弁慶が使っていた薙刀は“岩融”と呼ばれる大型のもので、記録によれば、刃渡り3尺5寸(105cm)もあったとされています。

 ちなみに、“なぎなた”の漢字表記としては、薙刀の他に長刀がありますが、“横に大きく振り払って切る”という意味の“薙ぐ”刀、すなわち、刃の重さと遠心力を使って相手にダメージを与えるという、この武器としての本質からすると、薙刀の方が適切です。長刀という表記だと、単に刃渡りの長い“長刀(ちょうとう)”と区別できませんので…。

 さて、弁慶の時代の標準的な薙刀は刃渡り3尺(90cm)以下でしたから、やはり、岩融は別格の大きさです。弁慶は、生涯、岩融を愛用し続け、1189年に衣川の戦いで戦死し、有名な“弁慶の仁王立ち”となったときにも、その手にはしっかりと岩融が握られていたとされています。今回ご紹介の切手に描かれている薙刀も、もちろん、岩融のはずなのですが、切手を見る限り、どうも刃渡りが3尺5寸もあるようには見えないのが、ちょっと残念です。

 なお、南北朝の争乱の頃までは、薙刀は武器として盛んに用いられていましたが、応仁の乱の後、足軽の歩兵集団が誕生し、兵たちが密集して攻撃を仕掛ける戦法が主流になると、兵たちには薙刀を振り回すだけの空間的な余裕がなくなります。そこで、穂先が軽量で、部隊として一斉突撃に向いている槍が普及し、薙刀は実用的な武器としてはすっかりすたれてしまいました。

 その後、江戸時代に入ると、薙刀は敵の殺傷そのものを目的とはしない“武芸”の具として発展し、女性による女薙刀が競技として定着。これが、現在のスポーツ競技としての“なぎなた(競技名としては、かな書きが正式)”の源流となりました。

 ちなみに、薙刀の歴史と女性との関係については、拙著『日の本切手 美女かるた』でもまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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