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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 元祖・名誉革命の切手
2016-12-10 Sat 15:30
 きのう(9日)、韓国の朴槿恵大統領の弾劾訴追案が可決されたことについて、朝鮮日報や中央日報など、韓国の主要メディアはこれを“(国民の)名誉革命”と報じているそうです。まぁ、流血を伴わずに現政権を(事実上)打倒したという意味なのでしょうが、“名誉革命”というと、僕などはこの切手の題材となっている方を思い出しますな。(画像はクリックで拡大されます)

      オランダ・名誉革命300年

 これは、1988年にオランダで発行された“名誉革命300年”の記念切手で、同革命で英国に渡ったオレンジ公ウィリアムと妻マリーの肖像が描かれています。

 1660年にイングランド王として即位したチャールズ2世は艶福家で庶子には恵まれていましたが、正室でポルトガルのブラガンザ王家出身の王妃キャサリンとの間には子がありませんでした。このため、弟でヨーク公のジェームズが有力な後継候補となりましたが、彼はカトリックであったことから、その王位継承に反対する人々はホイッグ党を組織しました。一方、ホイッグ党とは逆に、チャールズ2世の後継者としてヨーク公の即位を認める勢力はトーリー党を組織します。

 ちなみに、1680年、ロンドン市内とその近郊でウィリアム・ドクラが創業した郵便の戸別配達サービス(ドクラのペニー・ポスト)の大口スポンサーであったロバート・マレイはホイッグ党の有力な活動家で、ドクラのペニー・ポストには、王室郵便の利益を独占的に与えられていたヨーク公の“財布”に打撃を与えようという意図もあったとみられています。

 さて、ドクラのペニー・ポスは、創業当初こそ、初期投資の必要もあって赤字運営でしたが、1682年初頭には事業収支は黒字に転換しました。すると、この機会をとらえて、1682年11月、ヨーク公は政府を動かし、ドクラに対して、彼の事業は郵便憲章が定める郵便事業の政府独占に違反しているとして、事業の特許を放棄し、2000ポンドの罰金を支払うよう要求。さらに、ペニー・ポストの事業を無償で没収し、強引に国有化したうえで、翌12月、ドクラの組織をそのまま引き継ぐかたちで官営のペニー・ポストを再開しました。

 その後、ヨーク公は、1685年、チャールズ2世の崩御を受けて、イングランド国王ジェイムズ2世として即位します。

 即位当初、ジェイムズ2世には嫡子がなかったため、国教会派の拠点である議会も、ジェイムズ2世1代限りであればカトリックの王もやむなしという立場でしたが、1688年、王妃が王子を産むと状況は一変。次の国王もカトリックとなることは絶対に許容できないと考えた議会は、ホイッグ・トーリーの党派対立を超えて、ジェイムズ2世の後継者として、国王の長女メアリとその夫で新教徒のオランダ総督ウィレム(英語読みでオレンジ公ウィリアム)を国王として招聘し、ジェイムズ2世を王位から追放しました。

 これが、いわゆる名誉革命で、今回ご紹介の切手はここから起算して300年になるのを記念して発行されたものです。

 翌1689年、イングランド議会は「権利の宣言」を提出。ウィレムとメアリはこれを承認してウィリアム3世とメアリ2世として即位します。さらに議会は権利宣言を「権利の章典」として制定し、イングランドにおける立憲君主制が成立しました。

 こうした時代の変化を受けて、1690年以降、ドクラもペニー・ポストの考案者として、毎年500ポンドの年金を受け取れるようになり、名誉を回復。さらに、1697-1700年にはペニー・ポストの監査官も務めました。

 なお、このあたりの事情については、拙著『英国郵便史 ペニー・ブラック物語』でもご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。

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