2016-10-07 Fri 18:34
国連安全保障理事会は、きのう(6日)、年末に退任する潘基文事務総長の後任として、元ポルトガル首相で前国連難民高等弁務官のアントニオ・グテレス氏(以下、敬称略)を総会に勧告する決議を満場一致で採択しました。総会は勧告を受け、来週、グテレス氏を第9代事務総長に任命する見通しです。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、2010年にポルトガルが発行した国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)60周年の記念切手です。 次期国連事務総長に内定したグテレスは、1995年10月28日から2002年4月6日 までポルトガルの首相を務めた後、2005年6月15日から2015年12月31日まで、国連の難民高等弁務官を務めていますので、この切手は彼の在任中の発行ということになります。なお、UNHCRの周年切手に関しては、2000年の創立50周年に記念切手を発行する国が多かったのですが、ポルトガルは50周年の記念切手は発行していません。ポルトガル郵政としては、やはり、自国の元首相であるグテレスが高等弁務官の地位にある以上、周年記念切手を発行しないわけにはいかないという判断から、60周年の切手を発行したということなのでしょう。 さて、UNHCRは、第二次世界大戦によって生じた大量難民の問題に対処するために、1946年4月20日に設立された“国際難民機関 (IRO) が1951年に活動を終了するのを前に、1950年12月14日、国連総会によって設立されました。これを受けて、翌1951年7月28日、難民を救済する法的な基盤かつUNHCRの活動の基本的な法的指針となる「難民の地位に関する条約(難民条約)」が採択されます。 当初、UNHCRは3年間の期限付きでスタートしましたが、実際に活動を開始すると、わずか3年で難民問題を解決することが不可能であることはすぐに明らかになりました。さらに、ハンガリーで1956年革命(ハンガリー動乱)がおこり、ソ連がそれを武力で弾圧したことから大量の難民が発生。UNHCRは最初の重大な緊急事態に直面し、将来的にUNHCRが不要になるとの理想論は完全に吹き飛びました。 その後も、パレスチナ紛争や1960年代以降のアフリカ諸国での独立紛争と内戦、中国での大躍進政策の失敗による難民潮、インドシナ紛争やバングラデシュ独立戦争、ラテンアメリカ諸国での内戦、アフガニスタン紛争、ソ連を含む旧東側諸国崩壊後の混乱などが相次ぎ、世界各国で難民が発生し続けており、UNHCRの予算規模も設立年の30万米ドルから、2015年には70億米ドルに拡大しています。 ちなみに、2005-15年に高等弁務官を務めたグテレスが取り組んだ難民問題のうち、大きなものとしては、イラク戦争とその後の治安の悪化に伴う難民問題と2011年以降のシリア内戦による難民問題がありますが、グテレス本人は、あまり一般に知られていない難民危機として、中央アフリカ共和国とコンゴ民主共和国における危機を挙げています。 次期事務総長への就任が内定したことを受けて、グテレスは早速「紛争やテロの犠牲者など最も脆弱な人々に奉仕する」との声明を発表。難民が第二次大戦後最悪の6500万人を超える中、UNHCRのトップとしての経験を持つ彼のリーダーシップが期待されるところです。 ★★★ 講座のご案内 ★★★ ・毎日文化センター 下記の通り、1日講座をやりますので、よろしくお願いします。(詳細は講座名をクリックしてご覧ください) 10月11日(火) 19:00-20:30 リオデジャネイロ歴史紀行 11月17日(木) 10:30-12:00 ユダヤとアメリカ ★★★ ブラジル大使館推薦! 内藤陽介の『リオデジャネイロ歴史紀行』 ★★★ 2700円+税 【出版元より】 オリンピック開催地の意外な深さをじっくり紹介 リオデジャネイロの複雑な歴史や街並みを、切手や葉書、写真等でわかりやすく解説。 美しい景色とウンチク満載の異色の歴史紀行! 発売元の特設サイトはこちらです。 * 8月6日付『東京新聞』「この人」欄で、内藤が『リオデジャネイロ歴史紀行』の著者として取り上げられました! ★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインよろしくポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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