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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 戦争は女の顔をしていない
2015-10-09 Fri 11:48
 今年のノーベル文学賞は、ベラルーシのジャーナリスト・ノンフィクション作家のスヴェトラーナ・アレクサンドローブナ・アレクシエーヴィッチが受賞しました。というわけで、彼女の代表作の一つ『戦争は女の顔をしていない』にちなんで、この切手を持ってきました。

      ソ連・女性狙撃手

 これは、1943年にソ連が発行した女性狙撃手の切手です。

 1941年に独ソ戦が勃発すると、ソ連では15-30歳の女性が志願兵として赤軍に入隊し、戦場に赴きました。その中には、従軍看護婦としての衛生大隊や製パン中隊、洗濯大隊などの後方支援だけでなく、実際に最前線で戦っていた女性たちも少なからずおり、1945年までに従軍した女性の数は100万を超えるともいわれています。

 そうした彼女たちの中でも、特に有名だったのが、狙撃兵として活躍したリュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリチェンコです。

 1916年生まれの彼女は、独ソ開戦時には24歳でキエフ大学に在学中でしたが、子供の頃から射撃競技に励んでいたこともあり、キエフ市内の赤軍事務所へと赴き、狙撃手としての入隊を志願。身体検査と適性試験に合格した後、第25狙撃兵師団第54狙撃連隊に二等兵として配属され、1941年8月、オデッサ市防衛の任務に就きました。

 彼女は、オデッサ、セヴァストーポリや北カフカスなどでの戦闘に参加し、1942年までに、36名の狙撃手を含む独軍兵士309名を射殺し、史上最高の女性スナイパーとして赤軍女性兵士の象徴的な存在となりました。

 その後、“英雄”を戦死させることを恐れた軍指導部は、彼女を女子狙撃教育隊の教官に任命し、前線からの離脱を命令。さらに、彼女を少佐に昇進させたうえで、外交宣伝の一環として米国へ派遣され、ソ連国籍を持つものとしては初めてホワイトハウスを訪問し、ルーズヴェルト大統領とも面会しています。
 
 帰国後の1943年、彼女は“ソ連邦英雄”の称号を授与されます。今回ご紹介の切手は、こうした時代背景の下、彼女をモデルにして圖案が制作されたものです。

 その後、彼女に憧れる女性が狙撃手候補として赤軍に入隊しましたが、第二次大戦を通じて従軍した約2000人の女性狙撃手のうち、終戦まで生き延びたのは500人以下だったといわれています。

 さて、今回、ノーベル文学賞を受賞したアレクシエーヴィッチは、パヴリチェンコのような英雄ではなく、独ソ戦に従軍した普通の女性の戦争体験を丹念に拾い集めた『戦争は女の顔をしていない』で旧ソ連時代の1984年にデビュー。戦後、勝利の陰で忘れられていた従軍女性たちの声から、彼女たちが体験した戦争の実像を描き出して、話題になりました。その後も、独ソ戦当時子供だった人々の体験を集めた『ボタン穴から見た戦争』(1985年)、アフガニスタン侵攻に従軍した人々やその家族に取材した『アフガン帰還兵の証言』(1991年)、チェルノブイリ原発事故に取材した『チェルノブイリの祈り』(1997年)など、市井の人々の心の声や小さな記憶を集めて伝えるドキュメンタリーを書きつづけています。

 なお、現在、彼女はベラルーシ国籍ですが、ベラルーシのルカチェンコ政権は、現在なおチェルノブイリの事故に対する言論統制が敷かれていることもあり、『チェルノブイリの祈り』のベラルーシでの出版は許されておらず、こうしたことも、今回の受賞の一要因になっているのかもしれません。

 * 昨日(8日)のトークイベント「切手に見る美女たち」のご案内は、無事、盛況裏に終了いたしました。お集まりいただきました皆様、スタッフの方々には、この場をお借りして、あらためてお礼申し上げます。


 ★★★ 講座「アウシュヴィッツの手紙」(10月16日)のご案内 ★★★ 

     ポーランド・アウシュヴィッツ解放30年   アウシュヴィッツの労務風景

 10月16日(金) 19:00~20:30、愛知県名古屋市の栄中日文化センターで、「アウシュヴィッツの手紙」と題する講座を行います。

 第二次大戦中、ポーランド南部のアウシュヴィッツ(ポーランド語名・オシフィエンチム)は、ナチス・ドイツの強制収容所が置かれ、ユダヤ人を中心に150万人以上が犠牲となった悲劇の地として知られています。今回の講座では、収容者の手紙を中心に、第二次大戦以前の状況を物語る郵便物・絵葉書、アウシュヴィッツを題材とした戦後の切手などもご紹介しつつ、さまざまな角度からアウシュヴィッツを考えてみたいと思います。

 申込方法など詳細は、こちらをご覧ください。(画像は、ポーランドが発行したアウシュヴィッツ解放30周年の記念切手、右側は収容者による労務風景を取り上げた戦後作成の絵葉書です) 皆様のご参加をお待ちしております。


 ★★★ 内藤陽介の最新刊  『日の本切手 美女かるた』  好評発売中! ★★★ 

        税込2160円

 4月8日付の『夕刊フジ』に書評が掲載されました!

 【出版元より】
 “日の本”の切手は美女揃い!
  ページをめくれば日本切手48人の美女たちがお目見え!
 <解説・戦後記念切手>全8巻の完成から5年。その著者・内藤陽介が、こんどは記念切手の枠にとらわれず、日本切手と“美女”の関係を縦横無尽に読み解くコラム集です。切手を“かるた”になぞらえ、いろは48文字のそれぞれで始まる48本を収録。様々なジャンルの美女切手を取り上げています。

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