2015-08-30 Sun 23:15
アフリカ南部の王国スワジランドで、28日(現地時間)、伝統行事の“処女ダンス(リード・ダンス)”に参加するため首都ムババーネ郊外に向かう途中だった少女たちを荷台に乗せたトラックが、路上で停車していた乗用車に衝突。少なくとも38人が死亡し、20人が負傷したそうです。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1968年1月5日、スワジランドが発行したリード・ダンスの切手です。 スワジランドは南アフリカとモザンビークに囲まれた内陸国で、現在のスワジ人の王家であるドラミニ家による支配体制は1745年に確立されました。 19世紀後半のムスワジ2世の時代、ドラミニ家はズールー人およびトランスヴァールのオランダ系ボーア人に対抗すべく英国に接近。1890年代には、英国とトランスヴァールによる共同統治を受けましたが、その後、トランスヴァールの単独支配下に置かれます。 (第2次)ボーア戦争が勃発すると、1902年、英国はスワジランドを英国高等弁務官領としましたが、ドラミニ家の王制は温存。1963年には、高等弁務官領から自治領へと昇格し、1967年の保護領時代を経て、1968年9月6日、スワジランド王国として独立しました。 自治領時代のスワジランドは、憲法に基づき、英国王の任命する弁務官の下、行政評議会と立法評議会が設置されていましたが、1972年5月、独立後初の総選挙で王党派のインボコドボ国民運動(INM)が圧勝すると、翌1973年、国王ソブーザ2世は憲法を廃止するとともに、政党を禁止。国王が行政・立法・司法を独占する絶対王政を復活させました。 ソブーザ2世は、1982年に崩御しましたが、その後、王位継承をめぐり王族内での対立が発生。1986年4月、現国王のムスワティ3世が即位します。現国王の下でも、絶対王政の基本構造は維持されており、1993年以降、5度の総選挙が実施され、2006年には1973年以来停止されていた憲法に代わる新憲法が制定されたものの、現在なお、政党活動は認められていません。 さて、今回問題となったリード・ダンスは、毎年8月から9月に開催されるもので、国中の処女が首都ムババーネ郊外の宮殿に集まるところから始まります。 その後、王母が宮殿に到着すると、行事に参加する女性たちは分散し、1日かけて背の高い葦(宮殿の修復などに使われます)を収穫し、上半身裸の伝統衣装や飾りを身にまとい、葦を持って歌い踊りながら行進して、王母に葦を捧げます。 葦を捧げた翌日、彼女たちは伝統衣装にビーズのネックレス、繭でできたアンクレット、帯、スカートを身にまとい、彼女たちの処女性の象徴としてブッシュナイフを手に持ち、ウムカショ(純潔を示す房飾り)を身に着け、歌を歌い、踊りながら行進します。切手に描かれているのは、この場面です。 この儀式には、王母や国王などが列席しますが、その際、国王は参加者の中から毎年のように新しい妻を1人選んでいることや(スワジランドでは一夫多妻が認められています)、年によっては、わずか6歳の少女が参加することなどから、欧米の人権団体などは行事そのものを問題視しており、今回の事件を機に、この行事に対する“外圧”は一層強まることが予想されています。ちなみに、今年のリード・ダンスのクライマクスは、明日(31日)、行われる予定だそうです。 ★★★ よみうりカルチャー荻窪の講座のご案内 ★★★ 10月から毎月1回(原則第1火曜日:10月6日、11月3日、12月1日、1月5日、2月2日、3月1日)、よみうりカルチャー荻窪(読売・日本テレビ文化センター、TEL 03-3392-8891)で下記の一般向けの教養講座を担当します。(下の青い文字をクリックしていただくと、よみうりカルチャーのサイトに飛びます) ・イスラム世界を知る 時間は15:30-17:00です。 初回開催は10月6日で、途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ 内藤陽介の最新刊 『日の本切手 美女かるた』 好評発売中! ★★★ 税込2160円 4月8日付の『夕刊フジ』に書評が掲載されました! 【出版元より】 “日の本”の切手は美女揃い! ページをめくれば日本切手48人の美女たちがお目見え! <解説・戦後記念切手>全8巻の完成から5年。その著者・内藤陽介が、こんどは記念切手の枠にとらわれず、日本切手と“美女”の関係を縦横無尽に読み解くコラム集です。切手を“かるた”になぞらえ、いろは48文字のそれぞれで始まる48本を収録。様々なジャンルの美女切手を取り上げています。 出版元のサイトはこちら、内容のサンプルはこちらでご覧になれます。ネット書店でのご購入は、アマゾン、boox store、e-hon、honto、YASASIA、紀伊國屋書店、セブンネット、ブックサービス、丸善&ジュンク堂、ヨドバシcom.、楽天ブックスをご利用ください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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