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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 最古のコーランの断片、見つかる
2015-07-23 Thu 12:06
 英バーミンガム大学は、きのう(22日)、イスラムの聖典コーランの世界最古の断片とみられる7世紀前半の古文書が見つかったと発表しました。というわけで、今日はこの切手です。

      ヒジャーズ

 これは、1916年10月、ヒジャーズで発行されたもので、カイロのスルタン・バルクーク・モスク所蔵のコーランの中から取った“聖メッカ”のカリグラフィが中央に大きく書かれています。また、カリグラフィにはアラベスク文様も施されており、コーランの装飾としては、一つの典型的なパターンとなっているのが嬉しいところです。なお、考え方にもよりますが、コーランを題材とした切手としては、一般に、これが最初の切手とされています。

 第一次大戦中、ドイツ側に立って参戦したオスマン帝国を内側から切り崩すため、英国はメッカの太守であったハーシム家(預言者ムハンマドの子孫)のシャリーフ・フサインとの間で、アラブが協商側に立ってオスマン帝国に対する叛乱を起こせば、イギリスは、戦後、アラブ国家の独立を支援するとの密約を結びます。この密約に従って、1916年、いわゆるアラブ叛乱が起こり、シャリーフ・フサインはオスマン帝国からの独立を宣言。いわゆるヒジャーズ政権が誕生します。ちなみに、ヒジャーズというのは、アラビア半島の紅海沿岸、メッカとメディナを含む地域のことで、現在ではサウジアラビアの領内に含まれています。

 さて、ヒジャーズ政府の存在を内外に誇示するため、同政府の庇護者であった英国は、シャリーフ・フサインとも協議の上、ヒジャーズ独自の切手発行を計画。中央に“聖メッカ”の文字を大きく取り上げた切手を発行しました。今回ご紹介しているのも、その1枚です。

 このとき発行された切手は、英国が主導して作った関係上、“聖メッカ”の文字の元になったカリグラフィの素材は英国の実質的な植民地であったエジプト国内から集められ、カイロで印刷されています。こうしたところにも、英国とヒジャーズ政府との関係が透けて見えていて、興味深いといえます。

 さて、今回見つかった文書は、1920年代に中東で収集された後、バーミンガム大学の図書館に長年保存されていたもので、今回、放射性炭素年代測定法により、95%以上の確率で西暦645年以前の作成と判定されたそうです。

 イスラムの預言者ムハンマドは“神の言葉”を人々に説いたわけですが、彼の発した言葉のうち、人間としてのムハンマド自身の言葉と“神の言葉”は区別されたうえで、人々が記憶によって伝承していました。しかし、初期のイスラム社会は戦争が相次ぎ、“紙の言葉”を暗唱している人たちも少なからず犠牲になりました。また、ムハンマドの死後、イスラム世界が急速に拡大していったこともあって、記憶による伝承という性質から、どうしても、コーランの文言に移動が生じ始めます。このため、第3代カリフのウスマーンによって正典としてのコーランの編纂作業が開始され、西暦650年頃に完成したのが、現在のコーランとされています。

 したがって、今回の文書が、ほんとうに645年以前に作成されたものだとすると、正典としてのコーランの成立過程を知るうえで、きわめて重要な発見となるわけで、実に興味深いですな。

 
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