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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に描かれたソウル:朝鮮ホテル
2014-11-28 Fri 11:40
 ご報告がすっかり遅くなりましたが、、『東洋経済日報』10月31日号が発行されました。僕の月1連載「切手に描かれたソウル」では、今回は、この10月に朝鮮ホテル(現ウェスティン朝鮮ホテル)が創業100周年を迎えたということで、こんなモノをご紹介しました。(画像はクリックで拡大されます)

      朝鮮ホテル・カバー

 これは、1929年9月9日、朝鮮ホテルの封筒を使って京城から米国宛に差し出されたカバーです。

 旧朝鮮王朝時代、ソウルには西洋人を対象にした西洋式のホテルはありませんでした。このため、1910年に朝鮮統治を開始した日本の総督府は、諸外国からの賓客に対応すべく、西洋式ホテルの建設を計画します。

 建設用地としては、1897年に朝鮮国王だった高宗が大韓帝国皇帝として即位する際に祭天が行われた圜丘壇の敷地があてられることになりました。鉄道の京城駅(現ソウル駅)から近いというロケーションに加え、日韓併合により、新たな皇帝が即位する可能性がなくなったと考えられたためです。

 開業したホテルは朝鮮総督府鉄道の付属施設でしたが、外国の要人をもてなすための迎賓館という位置づけでもありました。このため、当時の朝鮮総督府の威信をかけて、朝鮮半島初のエレベーターが設置されたほか、開業当時は日本国内でも珍しかったアイスクリームも販売されています。

 今回ご紹介の封筒にはホテル外観のイラストが印刷されており、旧圜丘壇の敷地内にあった楼閣、皇穹宇(現在でもホテルの敷地内に残されています)が左側に見えます。ホテルの住所表示が“KEIJO(SEOUL) CHOSEN(KOREA)”としか書かれていませんが、これは、朝鮮半島を代表するホテルとして、細かい番地など書かなくても不便はないとの自信の表れでしょう。

 その後、戦時下においても朝鮮ホテルは通常通り営業を続けます。1945年8月の解放後、ソウルに進駐してきた米軍は、当初、朝鮮ホテルに軍政庁司令部を置き、ホテルの運営も米軍が主導することになりました。ちなみに、米国から帰国し“米国とのコネクション”を強調することで大韓民国の初代大統領となった李承晩の事務所も、朝鮮ホテル内に置かれています。

 1948年8月、大韓民国が正式に発足すると、朝鮮ホテルの運営権は韓国人に移され、その際、ホテル名のローマ字表記は、日本語の“Chosen Hotel”から韓国語の“Chosun Hotel”に変更されましたが、“朝鮮”の名前そのものは継承されました。また、朝鮮戦争中の1950年には、南侵してきた朝鮮人民軍の占領下でホテルも北朝鮮に接収されるなど苦難の時期を体験しています。

 現在のホテルの建物は、1970年に建てかえられたもの。米国の大手ホテルチェーンのウェスティン・ホテルズと提携し、現在の名称の“ウェスティン朝鮮ホテル”と改称されたのは、1981年のことでした。

 なお、1995年、ホテルの韓国側の資本は、新世界百貨店(ソウルの本店は日本統治時代の1930年に三越京城店として開業)を経営する新世界グループがすべて買収し、現在に至っています。


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 日本からの解放と、それに連なる朝鮮戦争の苦難の道のりを知らずして、隣国との関係改善はあり得ない。ハングルに訳された韓国現代史の著作もある著者が、日本の敗戦と朝鮮戦争の勃発から休戦までの経緯をポスタルメディア(郵便資料)という独自の切り口から詳細に解説。解放後も日本統治時代の切手や葉書が使われた郵便事情の実態、軍事郵便、北朝鮮のトホホ切手、記念切手発行の裏事情などがむしろ雄弁に歴史を物語る。退屈な通史より面白く、わかりやすい内容でありながら、朝鮮戦争の基本図書ともなりうる充実の内容。

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