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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 NZ総選挙は与党勝利
2014-09-21 Sun 15:17
 ニュージーランドで、きのう(20日)、総選挙が実施され、与党・国民党が48%の票を獲得。親中派で知られるキー首相の3期目就任が確実となりました。というわけで、今日はこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      朝鮮戦争国連軍(NZ)

 これは、朝鮮戦争に参加したニュージーランド兵が、1951年6月、在朝鮮の第41野戦局から本国宛に差し出したエアメールです。

  朝鮮戦争開戦4日後の1950年6月29日、ニュージーランド政府はトゥティラおよびプカキの2隻のフリゲート艦を朝鮮海域に派遣することを決定。これら2隻は7月3日にオークランドのデヴォンポート海軍基地を出発し、8月2日、日本の佐世保港で他の英連邦諸国の艦船と合流して、9月の仁川上陸作戦にも参加しました。その後も、戦争の全期間を通じて、ニュージーランド海軍は、常時、最低2隻のフリゲート艦を朝鮮海域に派遣しています。

 一方、地上軍に関しては、1950年7月26日、ニュージーランド政府は志願兵からなる戦闘部隊の派遣を決定して1044名を選抜。彼らは、翌1951年1月21日に釜山に上陸し、英連邦第27歩兵旅団に組み込まれて、漢江を遡上してきたニュージーランド海軍の兵力と連携して、同年4月22-25日の“加平(京畿道)の戦い”や10月3-8日の“(第1次)馬良山の戦い)などで共産側を38度線以北に押し戻すうえで重要な役割を果たしました。

 休戦協定後もニュージーランド軍は朝鮮への駐留を続けましたが、1955年までには大半の兵力が帰国し、1957年には連絡将校1名を残して、完全に撤退しました。朝鮮戦争におけるニュージーランド軍の参戦人数は累計5000名を超え、33名が戦死、79名が負傷しています。

 ちなみに、朝鮮戦争を通じて、ニュージーランドはアジア太平洋地域での共産主義の拡大を阻止するための軍事同盟の必要性を痛感するようになり、戦争中の1951年9月、米国、オーストラリアの3国による太平洋安全保障条約(加盟国の頭文字を取って“ANZUS:アンザス”と呼ばれています)が調印されたことは記憶にとどめておいてよいでしょう。

 さて、今回のニュージーランドの総選挙では、与党・国民党の対中政策が一つの争点になっていました。

 すなわち、近年、ニュージーランドでは、中国など海外から投機マネーが流入し、住宅価格が上昇。 このため、野党は住宅難などへの与党の対応が不十分だとして、新税の導入や外資の審査基準の厳格化を公約に掲げていましたが、対する与党は、低所得者層の不満解消のため所得税減税を打ち出すとともに、より一層の外資誘致(その中心は中国系資本)を進める姿勢を打ち出していました。

 また、近年、ニュージーランドは中国向けの輸出増加により、国内総生産(GDP)成長率が2013年4月-2014年3月に3.3%を記録していますが、こうした事情を踏まえ、キー首相は、ことし3月の訪中時、対中貿易総額を2020年までに現在の1・5倍近い300億ニュージーランド・ドル(約2兆6500億円)に引き上げることで合意するなど、対中依存をさらに推し進める意向を明らかにしています。

 今回の総選挙の勝利に関して、キー首相は「この国は正しい方向に進んでいる」と勝利宣言したそうですが、はたして、こうした対中姿勢が“正しい方向”なんでしょうかねぇ。すくなくとも、中華人民共和国が、建国以来一貫して、人権抑圧を続けてきた一党独裁のファシスト国家であり、現在も周辺諸国への侵略の意図を露わにしていることを考えると、かつて、朝鮮戦争で中国人民志願軍と戦い、ANZUSを調印して中国の脅威に備えようとした先人たちの努力について、キー首相はどのようにお考えなのか、きちんと説明していただきたいものです。

 なお、朝鮮戦争では、ニュージーランド以外にも、多くの国が国連軍に参加していますが、それらについては、拙著『朝鮮戦争』でも1章を設けてまとめております野で、機会がありましたら、是非、お手に取ってご覧いただけると幸いです。


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