2014-04-21 Mon 14:39
きょう(21日)は、ラスタファリ運動において“神の化身”と信じられているエチオピア皇帝ハイレ・セラシエ1世が1966年4月21日にジャマイカを訪問したことにちなむ“グラウネーション・デー”だそうです。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1930年にエチオピアが発行した皇帝ハイレ・セラシエ1世即位記念の加刷切手です。加刷の元になった台切手は、1928年に発行された2メハレク切手で、皇帝として即位する以前の皇太子ラス・タファリ・マコンネンとしての肖像が描かれています。 ハイレ・セラシエは、1892年、エチオピア南部・ショア地方の貴族の子として生まれました。血縁上は皇帝・英雄メネリク2世の従兄弟の子にあたっており、1916年、メネリク2世の娘・ザウディトゥが女帝として即位すると、皇太子・摂政となり、実権を掌握。1930年4月3日、皇帝ハイレ・セラシエ1世として即位しました。 いわゆるラスタファリ運動は、1910年代、ジャマイカ出身のマーカス・ガーベイが米国でエチオピアニズム(当時、アフリカの黒人国家で唯一植民地化されていなかったエチオピアを黒人の魂の故郷とする思想)の立場から、黒人のアフリカ帰還を奨励したのがルーツです。 1927年、ガーベイは「アフリカを見よ。黒人の王が戴冠する時、解放の日は近い」との予言を発表しましが、はたして3年後の1930年4月、エチオピアでハイレ・セラシエ1世が皇帝として即位したことから、彼らは、ハイレ・セラシエ1世を神(ジャー)の化身とみなし、アフリカ大陸を統一し、離散した黒人のアフリカ帰還を告げる救世主として崇拝の対象とするようになりました。これに伴い、皇帝の崇拝者は皇帝の即位以前の名前にちなんで“ラスタファリアン”、彼らの運動はラスタファリ運動と呼ばれるようになりました。 さて、ハイレ・セラシエ1世は、1966年4月21日、ジャマイカを訪問し、ラスタファリアンの熱狂的な歓迎を受けました。その歓迎ぶちには、皇帝本人も当惑を隠せないいほどでした。 この時期、エチオピア南部シャシャマネのマルカウォディャ地区には、ジャマイカからの移民が皇帝から土地を与えられて済んでいましたが、自分のジャマイカ訪問がラスタファリアンの情熱を刺激して大量のジャマイカ移民がエチオピアに流入することを恐れた皇帝は「ジャマイカ社会を解放するまではエチオピアへの移住を控えるように」という内容の私信を主なラスタ指導者に送り、エチオピアへの移民を牽制しています。なお、ジャマイカの音楽として知られるレゲエは、ハイレ・セラシエ1世のジャマイカ訪問を機に、ラスタファリ運動の思想やメッセージを伝えるための手段として発展したものです。 さて、ことしは、わが国とカリブ共同体(旧英領を中心にカリブの14か国1地域が加盟)の事務レベル協議開始後20年が経過した年であるとともに、ジャマイカならびにトリニダード・トバゴとの国交樹立50周年にもあたることから、“日・カリブ交流年”とされています。8月1-3日、東京・墨田区で開催が予定されている<全日本切手展2014>でも、これにちなみ、特別企画としてカリブ切手展を併催の予定です。今後も、同展の事前プロモーションを兼ね、機会を見つけて関連の切手をご紹介していきたいと考えておりますので、よろしくお付き合いください。 ★★★ 切手が語る台湾の歴史 ★★★ 5月15日13:00から、よみうりカルチャー北千住にて、よみうりカルチャーと台湾文化部の共催による“台湾文化を学ぶ講座”の一コマとして、「切手が語る台湾の歴史」という講演をやります。 切手と郵便はその地域の実効支配者を示すシンボルでした。この点において、台湾は非常に興味深い対象です。それは、最初に近代郵便制度が導入された清末から現在に至るまで、台湾では一貫して、中国本土とは別の切手が用いられてきたからです。今回の講演では、こうした視点から、“中国”の外に置かれてきた台湾(史)の視点について、切手や郵便物を題材にお話しする予定です。 参加費は無料ですが、事前に、北千住センター(03-3870-2061)まで、電話でのご予約が必要となります。よろしかったら、ぜひ、1人でも多くの方にご来駕いただけると幸いです。 ★★★ 講座「世界紀行~月一回の諸国漫郵」のご案内 ★★★ 東京・江東区亀戸文化センターで、5月から毎月1回、世界旅行の気分で楽しく受講できる紀行講座がスタートします。美しい風景写真とともに、郵便資料や切手から歴史・政治背景を簡単に解説します。受講のお楽しみに、毎回、おすすめの写真からお好きなものを絵葉書にしてプレゼントします! 詳細は、こちらをご覧ください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 『蘭印戦跡紀行』 好評発売中! ★★★ 日本の兵隊さん、本当にいい仕事をしてくれたよ。 彼女はしわくちゃの手で、給水塔の脚をペチャペチャ叩きながら、そんな風に説明してくれた。(本文より) 南方占領時代の郵便資料から、蘭印の戦跡が残る都市をめぐる異色の紀行。 日本との深いつながりを紹介しながら、意外な「日本」を見つける旅。 出版元特設ページはこちらです。また、10月17日、東京・新宿の紀伊國屋書店新宿南店で行われた『蘭印戦跡紀行』の刊行記念トークの模様が、YouTubeにアップされました。よろしかったら、こちらをクリックしてご覧ください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
#2327 世界最古の帝國
一時期ハイレ・セラシエ一世に関心を持って、関連書籍を読んだりしていました。
エチオピア帝國憲法は明治憲法の丸写しだったとか、廃位の直前に妥協策として皇帝が提示した改憲案が今度は昭和憲法だったとか、良くも悪しくも日本に憧れていたのは間違いないようですな。 #2328 コメントありがとうございます
そういえば、結果的に破談になったものの、黒田子爵の御令嬢との縁談なんて話もありましたね。
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