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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 台湾の青年節
2014-03-29 Sat 11:32
 きょう(29日)は台湾の青年節です。というわけで、ストレートにこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

       台湾・青年節(1954)

 これは、いまからちょうど60年前の1954年3月29日に台湾で発行された“第11回青年節”の記念切手です。

 台湾の青年節は、もともとは、1911年の反清武装蜂起の“黄花崗起義”を記念して、“革命先烈紀念日”とされていました。

 清末の1910年11月13日、マレー半島のペナン島に、孫文、趙声、黄興、胡漢民、鄧沢如らが集まり、革命組織であった中国同盟会として、広州で反清武装決起することを決定します。

 これを受けて、1911年1月、黄興、趙声、胡漢民は香港に統籌部を設立して武装蜂起の準備を進めました。計画では、4月13日に38の秘密組織が一斉に蜂起することになっていましたが、同盟会員の温生が先走って4月8日に単独行動を起こし、広州将軍・孚琦を殺害。また、同盟会側の弾薬が輸送途中で清朝に押収されたことより、計画は変更を余儀なくされ、4月23日、黄興ひきいる800名の決死隊が両広総督衙門、小北門、巡警教練所、守南大門への攻撃を開始しました。

 しかし、市街戦の末、同盟会側は86名の死者(当初は72名とされていたため、革命72烈士の名で呼ばれています)を出して敗退。黄興は広州から脱出しました。

 このときの烈士たちを顕彰するための革命先烈紀念日は、“黄花崗起義”が起きた1911年4月23日が旧暦の3月29日に当たっていたことから、新暦の3月29日に設定されましたが、1949年に国民党政府が台湾に遷移した後、青年節と改められました。

 その後、1952年3月29日、蔣介石は青年節演説の中で青年組織の設立を提唱。これを受けて、同年10月31日、中国青年反共救国団籌組原則が公布され、準備期間の後、1954年の青年節を期して“中国青年反共救国団”の結成大会が行われました。前年の第10回の記念切手が発行されず、第11回という半端な年回りながら今回ご紹介の切手が発行されているのは、そうした事情によるものです。なお、切手は一見すると、単にマラソンをしている若者という風にしか見えないのですが、郵政当局の説明によると、黄花崗の記念碑を背景に反共のために戦う若者を描いているのだそうです。

 さて、現在の台湾では、馬英九政権が昨年、中国と調印した“サービス貿易協定”の承認に反対する学生が立法院(国会)議場を占拠し続けています。同協定の内容は、中国側が金融や医療など80分野を、台湾側が運輸や美容など64分野を開放するという内容ですが、協定が発効すれば中国の資本と労働者が大挙して台湾に流入し、台湾の弱小企業が打撃を受け就職機会が奪われ、中国にのみ込まれる可能性が高いと指摘されています。また、協定では出版・印刷の市場も開放されるため、資本の論理によって中国側が台湾のメディアを制圧し、彼らが望む形での“統一”を進めるためのプロパガンダ、さらには、事実上の言論統制が行われるのはほぼ確実と見られています。

 こうしたことから、サービス貿易協定に関しては、最大野党の民主進歩党を中心に反発の動きが出ていましたが、与党の中国国民党は、“時間切れ”として審議を一方的に打ち切り、十分に話し合うことなく、強引に協定の同意を進めようとしたため、これに怒った学生たちが「台湾の民主主義を救うため」として行動を起こしたというわけです。

 もちろん、中国とのサービス貿易協定を結んだ結果として、台湾が中国に併合されることを、ほかならぬ台湾の人々が望んでいるというのであれば、外国人である僕がとやかく言うべき筋合いはありません。しかし、歴史的に見て、中国と台湾はまったく別個の存在であり、曲がりなりにも自由と民主主義を享受している台湾が、現状ではアジア最悪のファシスト国家である中華人民共和国に併呑されるのは何としても避けたいというのであれば、東日本大震災の時に台湾の人たちが示してくれた温情に報いるためにも、彼らを応援すべきではないかと思います。少なくとも、中国の天安門事件のときのように、彼らを“烈士”(弾圧の犠牲者)にしてしまうことのないように、国際社会はきっちりと見守っていく必要があります。

 なお、少し先の話ですが、5月15日、よみうりカルチャー北千住にて、よみうりカルチャーと台湾文化部の共催による“台湾文化を学ぶ講座”の一コマとして、「切手が語る台湾の歴史」という講演をやります。

 切手と郵便はその地域の実効支配者を示すシンボルでした。この点において、台湾は非常に興味深い対象です。それは、最初に近代郵便制度が導入された清末から現在に至るまで、台湾では一貫して、中国本土とは別の切手が用いられてきたからです。今回の講演では、こうした視点から、“中国”の外に置かれてきた台湾(史)の視点について、切手や郵便物を題材にお話しする予定です。

 参加費は無料ですが、事前に、北千住センター(03-3870-2061)まで、電話でのご予約が必要となります。よろしかったら、ぜひ、1人でも多くの方にご来駕いただけると幸いです。


 ★★★ ポスタル・メディアと朝鮮戦争 ★★★

 4月19日(土)14:00から、東京・水道橋の日本大学法学部三崎町キャンパス3号館2階・326講堂にて開催のメディア史研究会月例会にて、昨年(2013年)夏、バンコクで開催された世界切手展<Thailand 2013>に出品した“Korea and the Cold War 1945-1953”の内容を中心に、切手や郵便物などによって朝鮮戦争とその時代を再構成しようとする試みについてお話しします。

 なお、メディア史研究会はまったく自由な研究会で、会員以外の方でも気楽にご参加いただけますので(もちろん、無料)、よろしかったら、ぜひ、遊びに来てください。


 ★★★ 講座「世界紀行~月一回の諸国漫郵」のご案内 ★★★ 

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 詳細は、こちらをご覧ください。


 ★★★ 文京生涯カレッジ(第13期)のご案内 ★★★

 文京学院大学が一般向け(=どなたでも受講できます)にさまざまな講師を招いて行う通年の教養講座「文京生涯カレッジ」の第13期が4月15日から始まります。僕も、7月15・22日に「バスコ・ダ・ガマのインドを歩く」、9月9日に「ドバイ歴史紀行」のお題で登場します。詳細はこちらですので、よろしかったら、ぜひご覧ください。


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