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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 世界漫郵記:ドバイ⑦
2014-03-12 Wed 11:21
 ご報告がすっかり遅くなりましたが、『キュリオマガジン』2014年3月号が出来上がりました。僕の連載「郵便学者の世界漫郵記」は今回が最終回ですが、前回に続きドバイ篇の第7回目として、ドバイの“遺産区域”とされているバスタキーヤ地区にフォーカスをあてました。その記事の中から、この切手をご紹介します。(以下、画像はクリックで拡大されます)  

       ドバイ・珊瑚とナツメヤシの家

 これは、2003年にアラブ首長国連邦(UAE)が発行した伝統家屋の切手のうち、珊瑚や石灰岩とナツメヤシで作られた“サフ”と呼ばれるスタイルの家です。

 ホルムズ海峡から内側のペルシァ湾岸は、古来、海賊の出没する地域として知られていました。このため、18世紀以降、英国のインド進出が本格化するようになると、英国はインドへのシーレーン確保のため、マスカト(現オマーン)の首長と結んで本格的な海賊討伐に乗り出します。

 その結果、1820年、英国とこの地域の首長たちの間に休戦条約が結ばれ、英国は、彼らを“独立国”として承認する代わりに(休戦協定=truceに基づいて独立を認められた国々であるため、休戦協定諸国=Trucial Statesと呼ばれました)、マスカトが所有していたザンジバル諸島などを支配下に置いたほか、この地域に監視所と燃料補給施設を設置。さらに、1891-92年にかけて、各首長国と排他的協定を結んで保護下に入れ、ペルシァ湾岸におけるプレゼンスを確立しました。

 そうした背景の下、マクトゥーム2世(在位:1894-1906)の時代、ドバイには大きな転機が訪れます。

 すなわち、1902年、対岸のペルシャが財政難からインドとの貿易に高率の関税をかけることを決定すると、高関税をきらったペルシャ商人たちは、ボンベイ(現ムンバイ)から直接ペルシャ領内に入るルートを避け、対岸の港にいったん荷揚げし、そこから、ペルシャ領内に入るルートを取るようになりました。

 マクトゥーム2世は、この機を逃さず、輸入関税を無税にするなどして、ペルシャ系商人を誘致。これに応えて、ペルシャ系のみならず、インド系の商人たちがドバイに集まるようになり、ドバイは湾岸地域の貨物の集散地として急速に発展し、ドバイの人口は一挙に数千人規模に膨らみました。

 こうして、イラン南部の港湾都市バスタクから移住してきた商人たちが集住するようになったのが、バスタキーヤ地区の始まりです。

 この地にやってきたバスタク商人の住宅は、かつては、今回ご紹介の切手にあるような、ナツメヤシとサンゴや石灰岩で組み立てられるのが一般的でした。ところが、現在のバスタキーヤ地区の建物は、自他の画像のように、1990年代以降、これとは別の伝統的な石造りの建築をコンクリートで再現したものが中心となっています。

       バスタキーヤ地区

 このように、再開発の結果、かつての猥雑で味のある雰囲気はバスタキーヤ地区からは失われ、すっかりきれいになりましたが、そうであればこそ、バスタキーヤ地区を“遺産区域”と呼ぶのが妥当かどうかは議論が分かれるかもしれません。

 さて、2008年11月からスタートした『キュリオマガジン』の連載「郵便学者の世界漫郵記」ですが、同誌の全面リニューアルに伴い、今回で最終回となりました。5年以上にわたりご愛読いただきました皆様には、この場を借りて、あらためてお礼申し上げます。
 

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