2014-03-03 Mon 14:12
おととい(1日)、ウクライナ新政権により同国の海軍総司令官に任命されたばかりのデニス・ベレゾフスキー提督が、きのう(2日)、セヴァストーポリの海軍本部をロシア軍の特殊部隊に包囲され、抵抗せずに降伏。これを受けて、クリミア自治共和国政府のアクショーノフ首相は、同日付で“クリミア海軍”を創設し、提督を同海軍司令官に任命するとともに、クリミア半島に駐留するウクライナ軍の全部隊に対し、自らへの忠誠を求めました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)
![]() これは、1954年10月17日、ソ連が発行したセヴァストーポリ防衛100周年の記念切手のうち、1855年にセヴァストーポリ要塞で戦死したロシア海軍の英雄、パーヴェル・ステパーノヴィチ・ナヒーモフ提督を取り上げた1ルーブル切手です。“セヴァストーポリの提督”というと真っ先に名前の挙がる人物でしょう。ちなみに、この切手が発行された1954年は、ウクライナのロシアへの統合300年を記念して、クリミア州はソ連構成国のロシアからウクライナに移管された年でもあります。 1853年7月、ロシアはオスマン帝国の宗主権の下で自治を認められていたモルダヴィアとワラキアを解放するとの名目で同地に進軍。これに対して、オスマン帝国はロシア側に撤兵を求めたものの、ロシア側がこれを無視したことで、同年10月、クリミア戦争が勃発しました。 これに対して、ロシアの南下を嫌った英仏は、翌1854年3月28日、オスマン帝国と同盟を結んでロシアに対して宣戦布告。当初、同盟軍は黒海の要衝オデッサの攻略を目指していましたが、オーストリアが国境線に部隊を配置して同盟軍のバルカン山脈以北への進軍を阻止したため、黒海艦隊の基地があるセヴァストーポリが攻略目標となります。 一方、迎え撃つロシア側は、英仏艦隊によるセヴァストーポリへの砲撃を防ぐため、湾内に黒海艦隊を自沈させ、陸上でも防塁を設けて街全体を要塞化して対抗。1854年9月28日に始まった包囲戦は長期化し、1855年9月11日の要塞陥落まで、両軍で20万人以上の死者(病死を含む)を出す激戦となりました。この間、1855年7月12日には、黒海艦隊司令長官のナヒーモフが頭に銃弾を受けて戦死。この結果、ナヒーモフはロシア海軍の英雄となり、ソ連時代の1944年には、現在まで続く“ナヒーモフ勲章”が制定されたほか、海軍幼年学校は“ナヒーモフ海軍学校”と称されるようになりました。 さて、きのう、わずか1日でウクライナから寝返ったベレゾフスキーは、セヴァストーポリの海軍本部がロシア軍の特殊部隊に包囲されたため、抵抗できなかったということになっていますが、ウクライナ人からすると、セヴァストーポリの包囲戦で殉職したナヒーモフを見習えと言いたいところでしょうな。まぁ、今回、彼が“クリミア海軍”の初代海軍司令官に就任したことで、クリミア自治共和国内の海軍幼年学校が“ベレゾフスキー海軍学校”と名前を変えることぐらいはありうるかもしれません。そうなったら、同校の授業では、まず「寝返りは戦国の常」と学生たちに教えるんでしょうかね。 ★★★ よみうりカルチャー荻窪の講座のご案内 ★★★ 4月から、毎月1回(第1火曜日:4月1日、6月3日、7月1日、8月5日、9月2日)、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で下記の一般向けの教養講座を担当します。(詳細はそれぞれ講座名をクリックしてください) ・朝鮮半島のことを学ぼう 時間は13:00-14:30です。 ・イスラムを学ぶ 時間は15:50-17:00です。 初回開催は4月1日で、講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ 文京生涯カレッジ(第13期)のご案内 ★★★ 文京学院大学が一般向け(=どなたでも受講できます)にさまざまな講師を招いて行う通年の教養講座「文京生涯カレッジ」の第13期が4月15日から始まります。僕も、7月15・22日に「バスコ・ダ・ガマのインドを歩く」、9月9日に「ドバイ歴史紀行」のお題で登場します。詳細はこちらですので、よろしかったら、ぜひご覧ください。 ★★★ 内藤陽介の最新作 『蘭印戦跡紀行』 好評発売中! ★★★ ![]() 日本の兵隊さん、本当にいい仕事をしてくれたよ。 彼女はしわくちゃの手で、給水塔の脚をペチャペチャ叩きながら、そんな風に説明してくれた。(本文より) 南方占領時代の郵便資料から、蘭印の戦跡が残る都市をめぐる異色の紀行。 日本との深いつながりを紹介しながら、意外な「日本」を見つける旅。 出版元特設ページはこちらです。また、10月17日、東京・新宿の紀伊國屋書店新宿南店で行われた『蘭印戦跡紀行』の刊行記念トークの模様が、YouTubeにアップされました。よろしかったら、こちらをクリックしてご覧ください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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