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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ウクライナで政変
2014-02-24 Mon 14:13
 昨年11月、親露派政策を取るヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領がEUとの政治・貿易協定調印を見送って以来、親西欧派による大規模な反政府デモが続いていたウクライナで、昨日(23日)までに最高会議(日本の国会に相当)が大統領を解任。憲法の規定に基づき、野党出身のオレクサンドル・トゥルチノフ議長が大統領代行となり、ヤヌコーヴィチ政権は崩壊しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      ウクライナ・ソチ五輪

 これは、けさ閉幕したばかりのソチ五輪を記念して、ことし1月31日、ウクライナが発行した切手で、同国の女子バイアスロン代表選手が取り上げられています。

 2004年11月、ウクライナでは、レオニード・クチマ大統領の任期満了に伴い、大統領選挙が行われました。選挙戦は、従来通りロシアとの密接な関係を維持するのか、それとも、ロシアとは距離を置き将来のEU加盟を目指すのか、という点が争点となり、親露派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチと、親西欧派の野党代表、ヴィクトル・ユシチェンコが激しい選挙戦を展開。上位2名による決選投票の結果、2004年11月21日、ヤヌコーヴィチの当選が発表されます。

 ところが、選挙期間中の9月、ユシチェンコがダイオキシン中毒によるとみられる重病にかかる事件が起きていたこともあり(ユシチェンコ陣営は反対陣営に毒を盛られたと主張します)、ユシチェンコ陣営は選挙に不正があったと主張。再選挙を求めて、首都キエフを中心にさまざまな抗議活動を展開しました。これが欧米のメディアで大々的に報じられて国際世論の関心を呼び、最終的にはEUとアメリカの圧力もあって3度目の投票(決選投票のやり直し)が行われ、12月28日、親西欧派のユシチェンコが当選を果たしました。いわゆる“オレンジ革命”です。

 しかし、新政権は“革命”の果実の分配をめぐって発足当初から内紛が絶えず、早くも2005年9月8日には首相のユーリア・ティモシェンコ以下の全閣僚が解任されました。その後も、仇敵ヤヌコーヴィチが首相に就任したり、ティモシェンコが首相に返り咲いたりするなど、権力闘争による混乱が繰り返され、“オレンジ革命”に熱狂した市民の期待も急速にしぼんでいくことになります。

 一方、ロシアは自らの裏庭である隣国ウクライナに“ロシア離れ”を公言する新政権が発足したことに対して不快感を隠そうとはせず、ウクライナの生命線ともいうべき石油・天然ガスを大幅に値上げしたり、供給を一時的にストップしたりするなどしてウクライナ経済に揺さぶりをかけ続けました。さらに、2008年9月、リーマン・ショックから世界金融危機が発生。ウクライナ経済も甚大な打撃を被り、もはや、欧米諸国の経済支援もあてにできない状況となり、ウクライナ国民の間にもロシアと妥協し経済を立て直すべきだとの声が大勢を占めるようになります。
 
 結局、2010年1-2月に行われた大統領選挙(第1回投票は1月17日、決選投票は2月7日)では、親ロシア派ヤヌーコヴィッチがティモシェンコを抑えて当選。現職のユシチェンコは第1回で5位に終わり、決選投票にも残れない惨敗を喫しました。

 その後、ヤヌコーヴィチ政権は、ユシチェンコ時代の金看板のひとつであった北大西洋条約機構(NATO)への加盟方針を撤回。2010年4月には、ロシア黒海艦隊に対するクリミア半島セバストポリの基地貸与期限を2042年まで25年間延長することに同意するなど、対露接近の姿勢を鮮明にしています。さらに、2013年にEUとの間で仮調印された政治・貿易協定について、ヤヌコーヴィチ政権がロシアからの圧力を受けて正式調印を見送ったことで、西欧派の野党勢力が猛反発し、ウクライナ国内は大規模な反政府デモが発生するなど騒乱状態に陥りました。

 こうした状況の中で、ソチ五輪期間中の2月18日、首都キエフ中心部のユーロ・マイダン(ヤヌコーヴィチ政権に抗議し、親西欧派が独立広場から改称)や国家機関の周辺でデモ隊と治安部隊の大規模な衝突が発生。19日未明までに双方で少なくとも21人が死亡し、数百人規模の負傷者が発生する流血事件となりました。これに対して、19日には、政府側と反政府側の間でいったんは休戦が宣言されましたが、20日には再び衝突が起こり、100人以上が死亡。さらに、21日には野党指導者と大統領との間で政治危機の打開をめざす合意が署名されたものの、勢いを増すデモ隊は野党の弱腰を非難してキエフ中心部を占拠しました。ここにいたり、ヤヌコーヴィチは政権の維持を断念し、22日夜、東部ドネツクの空港から出国を試みたが、国境警備隊に阻止され、政権は崩壊しています。

 この間、ソチの五輪会場では、ウクライナ五輪委員会のセルゲイ・ブブカが、国際オリンピック委員会に、自国の五輪代表選手が黒い喪章をつけて今後の競技に臨むことができるよう要請。この要請は却下されたものの、20日には、選手村でウクライナでの衝突による犠牲者への黙祷がささげられたほか、女子アルペンスキーのウクライナ代表選手、ボグダナ・マツォツカと父親でコーチのオレグ・マツォツキーが、ヤヌコーヴィチに抗議して以後の競技を棄権しました。ちなみに、今回ご紹介の切手に取り上げられている女子バイアスロンの24kmリレーで、ウクライナ代表が金メダルを獲得したのは、その翌日、21日のことでした。

 今回のヤヌコーヴィチ政権崩壊で、昨年来のウクライナ騒乱は大きな節目を迎えましたが、親ロシア派の多い東部と親西欧派の多い西部の亀裂は深刻なものとなり、ウクライナ国家の東西分裂に対する懸念も強まっています。仮に、東西分裂に伴う新国家の誕生ということにでもなったら、切手の面でも新たな動きが生じることになるでしょうから、当面、ウクライナのニュースからは目が離せない日が続きそうです。


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