2013-08-10 Sat 07:04
世界切手展<BANGKOK 2013>も無事に終了しましたので、きのう(9日)からバンコクを離れ、ラオスの世界遺産都市ルアン・パバーン(ルアン・プラバーンとも)に来ています。というわけで、きょうはこんな切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1943年に仏領インドシナで発行されたルアンパバーン国王シーサワーンウォンの切手です。 現在のラオス国家の領域に相当するメコン川中流域は、歴史的には“百万頭の象の王国”を意味するラーンサーンと呼ばれており、ルアンパバーン王国、ヴィエンチャン王国、チャンパーサック王国、シエンクアーン王国が分立していました。その後、これらのラーンサーン諸王国はシャム(現タイ)のトンブリー王朝に征服され、その属領となりましたが、1893年のいわゆる“シャム危機”の結果、ラオス全領域はフランスの保護国となりました。 このため、タイにとっては、ラオスなど“失地”の回復は国民国家としての悲願となっていました。こうした中で、1939年9月、ヨーロッパで第二次大戦が勃発し、翌1940年6月、ラオスの宗主国フランスがドイツに降伏。さらに、アジアでは日中戦争を戦っていた日本が、同年9月、中国との国境封鎖を求めて仏印の北部に軍事進駐すると、その機会をとらえて、タイは仏印に対して国境紛争を挑みます。この結果、タイは大きな犠牲を出しながらも、翌1941年1月28日、日本の調停により、ラオスの一部とカンボジアの北西部を領土として回復しました。 これに対して、フランスは、仏印防衛のための拠点として、自らの支配下に残ったルアンパバーン王国を強化することで対抗しようとし、ルアンパバーン域内各地に小学校を新設。ヴィシー政権のスローガンでもある「勤勉・家族・祖国」を掲げて、ルアンパバーンの住民に対して“母なる祖国・フランス”への奉仕を強調しました。このことは、結果的に、現在の“ラオス”という枠組みでのナショナリズムを生み出すこととなります。 その象徴的な存在となったのが、ルアンパバーン王であったシーサワーンウォンで、今回ご紹介の切手が発行されたのも、そうした事情を反映してのことです。 さて、シーサワーンウォンは、1885年6月14日生まれ。1904年に仏領保護国としてのルアンパバーン王として即位した人物ですが、1945年3月9日、日本軍が明号作戦を発動し、仏印を軍事占領すると、4月8日、ラオス王国の独立を宣言しています。しかし、もともと(最大の敵であるタイに対抗するために)親仏的な傾向が強かったこともあって、王は日本の敗戦後に独立を撤回。その後、フランスは1949年に改めて立憲君主国としてのラオス王国を建国し、シーサワーンウォンはその初代国王として即位しました。 現在、僕が滞在しているルアンパバーンは、そうしたルアンパバーン王国ないしはラオス王国のゆかりの地で、シーサワーンウォン王の旧王宮は、現在、ルアンパバーン国立博物館として玉座などはそのまま展示・公開されています。また、敷地内にはラオス最初の立憲君主として、憲法典を手にする王の巨大な銅像が建てられています。ヴィエンチャン市内にも、これと同じと思われる銅像がありました。下の画像の、左がルアンパバーンの国立博物館内の像、右がヴィエンチャン市内の像です。 このほかにも、町全体が世界遺産に指定されているだけあって、ルアンパバーン市内は半日歩いてみただけでも、いろいろと興味深い風景に出会うことができました。それらについても、いずれ機会を作ってご紹介していければ…と思っております。 ★★★ 内藤陽介の最新作 『蘭印戦跡紀行』 好評発売中! ★★★ 日本の兵隊さん、本当にいい仕事をしてくれたよ。 彼女はしわくちゃの手で、給水塔の脚をペチャペチャ叩きながら、そんな風に説明してくれた。(本文より) 南方占領時代の郵便資料から、蘭印の戦跡が残る都市をめぐる異色の紀行。 日本との深いつながりを紹介しながら、意外な「日本」を見つける旅。 * 出版元特設ページはこちらをご覧ください。 ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。次回開催は9月3日(原則第1火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
|
||
管理者だけに閲覧 | ||
|
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
|