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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 パブロ・ネルーダの毒殺疑惑
2013-07-11 Thu 11:38
 チリのノーベル文学賞作家パブロ・ネルーダの毒殺疑惑を解明するため、きのう(10日)、チリ司法当局は遺体から採取した骨の一部をスペインと米国に送り、精密鑑定をすると明らかにしました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

       パブロ・ネルーダ

 これは、1991年、パブロ・ネルーダのノーベル文学賞受賞20周年を記念してチリが発行した切手です。日本では知名度がいまいちのネルーダですが、スペイン語圏では、ゲバラと並ぶ左派のヒーローですので、各国からさまざまな切手が発行されています。ただし、そうしたキャラクターのゆえに、本国のチリでは、ピノチェト政権下でながらく政権から敵視されていましたので、1990年に同政権が崩壊したのを受けて、翌1991年にようやく今回ご紹介の切手が発行されたというわけです。デザイン的にも、なかなか、ポップで良い感じですな。

 さて、ネルーダは、1904年、チリのパラルでバスク系チリ人の家庭に生まれました。外交官としてスペインに赴任していた際にスペイン内戦に遭遇し、共産主義に傾倒して共和国を支援しました。1945年に上院議員に当選し、チリ共産党に入党。ところが、1948年に共産党が非合法化されたため、イタリアに亡命しました。

 その後、1958年に共産党は再び合法化されたことを受けて帰国。1970年の大統領選挙で社会党のサルバドール・アジェンデが当選し、社会主義政権が誕生すると駐仏大使に任じられ、在任中の1971年にノーベル文学賞を受賞しました。

 しかし、1972年に病気のために帰国。さらに、翌1973年9月11日、ピノチェトのクーデターでアジェンデ政権が崩壊すると、軍事政権によってネルーダの家は荒らされ、病状も悪化。9月23日には危篤状態に陥り、病院に向かう途中の軍の検問で救急車から引きずり出されるなどして、病院に到着した時には既に死亡していました。

 ネルーダの死については、軍事政権の仕打ちに絶望して病状が悪化して死に至ったというのが公式の説明でしたが、1990年のピノチェト政権崩壊後は毒殺説がささやかれるようになり、2011年5月、チリ共産党がサンティアゴの控訴裁判所へ告訴状を提出していました。これを受けて、今年(2013年)4月、チリの司法当局は死因の確認のため、ネルーダの遺体を掘り起こして調査を開始し、今回の精密鑑定にいたったというわけです。

 まぁ、熱心なクリスチャンの多い南米では、一度埋葬された遺体を掘り起こすことに抵抗を感じる人も少なくないのではないかと思いますが、無神論者の共産党の場合、そのあたりは気にしないということなんでしょうな。ただし、真相が明らかになったとして、そのことが人々のチリ共産党に対する支持につながるかどうかは、良くわかりませんがね。


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