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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 昭和の日
2013-04-29 Mon 10:41
 きょう(29日)は“昭和の日”です。というわけで、『マリ近現代史』を上梓したばかりの内藤としては、マリと昭和史の関連は何かないかと考えて、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

        東京五輪(マリ)

 これは、1964年にマリが発行した東京五輪記念の小型シートです。

 現在のマリ共和国が正式に発足したのは1960年9月のことで、翌10月には、わが国との国交も樹立されていますが、両国の関係で最初の大きな出来事としては、1964年の東京五輪にマリ代表が参加したことになりましょうか。1964年の東京五輪は昭和史の一大事件ですが、マリにとっても初の五輪参加として重要な意味を持っていますから、昭和史×マリの組み合わせとしては悪くないのではないかと思います。ちなみに、マリ国内の五輪委員会が設立されたの1962年のことで、IOCの承認を受けたのは翌1963年です。

 1964年の東京五輪にマリから参加した選手はサラ・カマラとドラマネ・セレメの2人で、いずれも男子陸上競技の選手です。成績は、カマラが100mに出場したものの1次予選敗退、セレメは100mで18位、走り幅跳び16位、砲丸投げ20位、走り高跳び21位、400mで15位、110m障害で16位、円盤投げ20位、棒高跳び18位、槍投げ16位、1500m14位でした。ちなみに、切手にはサッカーとボクシングも取り上げられていますが、この両種目ではマリ選手は出場していません。

 なお、独立後間もない時期のマリと東アジア諸国との関係では、日本よりも中国との関係がはるかに密接でした。

 すなわち、1960年10月25日、中国はマリとの国交を樹立しますが、早くも1961年2月には2国間の貿易協定を調印。1963年5月には文化協力協定を調印するなどして関係を深め、東京五輪の開催された1964年1月16日から21日の国務院総理(首相)の周恩来のマリ訪問(アジア・アフリカ諸国歴訪の一環として行われました)を機に、マリを親中派として確保することに成功しています。

 ちなみに、1964年1月、マリを訪問した周恩来は、大統領のモディボ・ケイタとの共同コミュニケにおいて「対外経済援助8原則」を発表。

 その内容は、①平等互恵に基づく相互主義、②援助にはいかなる条件も付けず、援助国である中国にはいかなる特権を与える必要はない、③援助に際しては、無利子または低利借款など、受領国の負担を軽減する措置を講じる、④自立更生・自立化を支える援助を行う、⑤資金蓄積に役立つ建設項目を重視する、⑥価格の決定は国際市場価格による、⑦援助受領国の要員に技術を完全に把握させる、⑧援助のために派遣される中国人専門家の待遇は現地スタッフと同じものとする、という破格のもので、援助を受けるマリにとっては良いことづくめでした。

 当然のことながら、ケイタは中国の“善意”を喜んで受け入れ、以後、この8原則が中国による低開発国援助のスタンダードとなります。さらに、1964年11月にはケイタが訪中し、中国からは1965年3月には国家副主席の劉少奇が、同年9月には国務院副総理兼外交部長(副首相兼外相)の陳毅がマリを訪問するなど、両国首脳の緊密な交流も行われ、マリは国連の代表権問題でも一貫して中国を支持するなど、西アフリカにおける親中派の代表格となりました。

 拙著『マリ近現代史』では、そうしたマリと中国との密接な関係についても、いろいろとご説明しております。機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 
  

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