2013-04-27 Sat 07:08
かねてご案内の通り、本日(27日)15時より、東京・浅草で開催のスタンプショウ会場内にて、拙著『マリ近現代史』の刊行記念トークを行います。入場は無料ですので、ぜひ、遊びに来てください。そのマリ情勢ですが、国連安保理が、25日(ニューヨーク時間)、国連平和維持活動(PKO)を展開する決議案を全会一致で採択しました。というわけで、きょうはマリ×国連ということで、この切手です。(画像はクリックで拡大されます)
これは、1961年5月18日、マリで発行された「独立および国連加盟記念」の航空切手で、マリの国旗(当時)とマリの地図に国連マークが描かれています。 現在のマリ(旧仏領スーダン)とセネガルに相当する地域は、1960年6月20日、マリ連邦としてフランスから独立しました。しかし、連邦のあり方をめぐって、旧スーダンとセネガルとの対立が生じ、2か月後の8月20日、首都ダカールに閣僚が集まり、連邦の新制度や正式な大統領の選出方法などについて討議していたところ、突如、「ケイタ大統領はあくなき野望を持ち、セネガル人圧迫のクーデターを企てた」として、セネガルがマリ連邦からの独立を宣言。大統領のケイタ以下、旧スーダン側の閣僚や公務員たちは軟禁され、翌21日、ダカール駅から臨時列車に乗せられて、スーダンへ追い返されてしまいました。 当然のことながら、ケイタら旧スーダン側は激怒し、ケイタはセネガルの独立阻止のために国連軍の派遣を要請。しかし、国連側は、セネガル独立はマリ連邦の“内政問題”として部隊の派遣を拒否したため、ケイタもセネガルの独立を承認せざるをえなくなり、1960年9月22日、旧スーダンの領域のみで、あらためて現在の“マリ共和国”として独立し、同月28日、国連に加盟します。今回ご紹介の切手はこれを記念して発行されたものです。 なお、切手に描かれている国旗は、中央に“カナガ”が描かれているマリ連邦時代のもので、1961年3月1日、カナガを削除した新国旗が、あらためて、マリ共和国の国旗として制定されています。今回ご紹介の切手は同年5月18日の発行ですので、おそらく、新国旗を入れてのデザイン制作は間に合わなかったということなのでしょう。 カナガは、もともとは、ドゴン族が祝祭の際にかぶって踊るマスクの人形のことで、天に向けられた手は恵みの雨を、地に向けられた脚は豊作を願うものです。ちなみに、ドゴン族は、ニジェール川流域、“バンディアンガの断崖”と呼ばれる標高差500m、幅150キロの範囲に、700の村落をつくり約25万人が生活しており、独特の仮面文化や神話は、フランスの民俗学者、マルセル・グリオールらの研究によって広く知られるようになり、彼らの居住地域であるバンディアンガの断崖は、ユネスコの世界遺産(文化遺産・自然遺産)にも登録されています。 マリ連邦の発足に際し、セネガル側の代表で優れた文化人でもあったレオポール・セダール・サンゴール(のち初代セネガル大統領)は、連邦の領域内にあるドゴン族の文化が西洋社会でも高く評価されていることを踏まえ、フランスの国旗をモデルとして、1798年のエチオピア国旗に由来する汎アフリカ色の緑(アフリカの植生)・黄(アフリカの富と繁栄)・赤(殉教ないしは独立のために流された血)を等間隔に描いた縦三色旗の中央に、人間の生命とエスプリのシンボルとしてカナガを加えることを主張。その結果できあがったのが、旧マリ連邦の国旗でした。 1961年3月1日の国旗の改正は、旧マリ連邦の国旗に描かれているカナガはイスラム(マリの人口の約9割はムスリムです)の禁じる偶像崇拝につながりかねないもので、好ましくないというのが表向きの理由でしたが、実際には、セネガル(のサンゴール)の影響を払拭しようという意図があったとみられています。 さて、本日のトークでは、仏領植民地時代から、今回ご紹介したような経緯でマリ共和国が独立し、その後、現在にいたるまでのおよその流れを切手や絵葉書などとともにご紹介していく予定です。国連のPKO派遣も決まり、いずれは自衛隊も現地へ向かうことも予想されますので、ぜひ、遊びに来ていただけると幸いです。 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★ 『マリ近現代史』 北アフリカ・マリ共和国の知られざる歴史から混迷の現在まで、 切手・絵葉書等で色鮮やかに再現したオールカラーの本格的通史! e-hon、hontoネットストア、7ネット・ショッピング、版元ドットコムで好評発売中のほか、amazonでも予約受付中! ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★ 4月から、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は5月7日、6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★ 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。 |
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